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「利回り」の数字に騙されるな! 〜魅力的な数字の裏に潜む罠〜

不動産投資の「利回り」理解していますか?

不動産投資用の物件を具体的に検討する時、皆さんはどこにポイントを置くでしょうか?

 

立地? それとも間取り? やはり物件価格でしょうか?

 

もちろんそれらも物件を判断する大きな要素ですが、最も大事な判断基準の一つとして「利回り」と答える方も多いでしょう。

 

ところが、実際にご相談を受けてみると、この利回りについてキチンと理解されていないケースが意外と多いことに驚かされます。

 

その大きな原因の一つとして、業者によって表示する利回りの計算方法にバラツキがある点が挙げられます。

 

今回は不動産投資における利回りの計算方法を通して、利回りの本当の意味を考えてみましょう。


「利回り」には2種類ある

不動産業者の広告を見ると、高利回りを謳うものが目につきます。中には10%以上の利回りを強調しているところも珍しくありません。

 

現状では都市銀行の普通預金の金利は0.02%程度ですから、仮に10%だとするとなんと500倍。それだけ聞けばとても魅力的な数字に思えます。

 

しかし、不動産投資の利回りを単純に銀行の金利と比べて良いものでしょうか。

 

そもそも不動産投資の利回りとはどうやって計算するのでしょうか。

 

利回りには大きく「表面利回り」と「実質利回り」があります。

 

この両者の違いはどこにあるのでしょうか? まずは「表面利回り」の計算から見てみましょう。


「表面利回り」だけでも落とし穴がある

不動産投資の表面利回りは、原則として

 

「年間家賃収入額÷物件価格」

 

で求められます。例えば1000万円の物件で年間家賃が100万円であれば、

 

「100万÷1000万=10%」

 

となります。こう考えれば、確かに物件によっては不可能ではないように思えます。

 

ただし、不動産投資において家賃収入が丸々手元に残るわけではありません。マンションであれば月々の管理費・修繕費がかかりますし、一棟アパートだとしても固定資産税の負担があります。

 

仮に先ほどの1000万円の物件に月々12500円の管理費・修繕費(年間15万円)と年間5万円の固定資産税がかかったとしたら、利回りはどう変化してくるでしょうか。

 

「(100万-15万-5万)÷1000万=8%」

 

となり、利回りは一気に低下してしまいます。

 

物件を売ることが仕事の不動産業者としては前述の「年間家賃収入額÷物件価格」で利回りを提示したいのも分かりますが、これら管理修繕費や固定資産税は物件を所有していれば必ず負担しなければならない費用ですので、投資家としては当然表面利回りに算入するべきものでしょう。

 

さらに言えば、部屋の設備も経年劣化により修理が必要となりますし(エアコン・給湯器・キッチンやユニットバスの蛇口レバー等)、入居者が退去した時のハウスクリーニング代や壁紙の張替え費用の大家負担、新しい入居者を仲介してもらった時は不動産業者に手数料を払ったりしますので、平均でならして年間家賃の5%程度の支出は計算しておかなければなりません。

 

これらの経費を計算に入れずに迂闊に利回り10%を信じてしまうと、実際に手元に残る金額とのギャップに愕然とする結果となってしまいがちです。

「実質利回り」はケースバイケース

さて、ここまでが表面利回りのお話。

 

私の定義する表面利回りとは、「その物件を所有すると必ずかかる費用を差し引いた利回り」となります。

 

それに対し、実質利回りとは「物件の経費に加え、その他の条件で負担すべき費用を差し引いた利回り」と言うことができます。

 

ここでいうその他の条件とは、大きく二つ、「借入金」と「税金」です。

 

まず借入金(アパートローン)の返済額をキャッシュフローから引かなければなりません。

 

これは自己資金(頭金)をどのくらいの割合で入れるか、借入金利がどのくらいになるかによって大きく変わってきます。極端な話、あまりに高い金利で借りてしまうとローン返済額でキャッシュフローがマイナスになってしまう可能性もあります。

 

さらに税金のことも忘れてはいけません。不動産所得の計算方法は複雑になりますのでここでは割愛しますが、所得に関しては所得税と住民税がかかってきます。

 

やり方によっては手元に現金を残しながら税金を抑えることもできますが、反対にキャッシュフローがマイナスなのにそこから税金を納めなければならないケースも想定されます。

 

最終的に手元にいくら残るかは、その人の他の所得も含め個別に計算しなければなりません。

 

つまり、同じ収益物件を購入したとしても、実質利回りは人それぞれで大きく異なってくるということになるのです。

 

実質利回りをモデルケースで考えてみましょう。条件は以下の通りです。
・物件価格 1000万円
・自己資金 250万円(頭金200万円 諸費用50万円)
・借入金額 800万円
・借入条件 20年間元利金等 金利2% 毎月返済額4万円
・年間経費 65万円
(内訳 管理修繕費15万円 固定資産税5万円 修理費5万円 ローン利息部部分15万円 減価償却費25万円)
・税負担 不動産所得 35万円に対し30%(所得税・住民税合計) 10万円

 


なんと、年間の手取り額は17万円。実質利回りは「17万円÷1000万円=1.7%」となります。

 

利回り10%で購入したつもりが実質利回りが1.7%ではガッカリです。

 

しかもこの試算では頭金を物件の2割入れていますから、フルローンで借りた場合の実質利回りは考えただけでもゾッとします。

 

こうして計算してみると、巷に溢れる「自己資金0でも不動産投資が始められる!」という宣伝文句にはよくよく注意してかからないといけないことがよく分かります。

隠れたる第3の「利回り」とは?

実質利回り1.7%と聞いて、あなたはどうお感じになるでしょうか。

 

中には「な〜んだ、そんな利回りなら株や投資信託をやったほうがいいね」と思う方もいるかもしれません。

 

でも、ちょっと待ってください。実は不動産投資にはもう一つ、隠された利回りが存在するのです。

 

不動産投資の第3の利回りとは、「自己資金に対する利回り」です。

 

ここまではあくまで物件価格を基準に利回りを計算してきました。

 

でも、考えてみてください。他の運用方法でも同じように計算できるでしょうか。

 

答えは「No」です。

 

なぜなら株や投資信託の場合、利回りを生み出す元金となるのはあくまで自己資金の部分だけだからです。

 

例えば、ある投資信託で年5%の利回りがあったとします。それだけ聞くと、先ほどの不動産投資より投資対象として優秀なように思えます。

 

ただし、元手となるのは自己資金だけ。先ほどの試算では250万円の自己資金がありましたから、これを5%で運用しても税引後は10万円にしかなりません。

 

それに対し、先ほどの不動産投資は同じ自己資金額でも17万円の利益を上げています。手取り金額の自己資金に対しての利回りは「17万円÷250万円=6.8%」まで跳ね上がります。

 

これが「レバレッジ効果」です。

 

レバレッジとは「テコの原理」を表す言葉ですが、このように借金という他人資本を使うことでより大きな運用効果を得る。不動産投資にはそのような特性があるのです。

 

借金と聞くとどうしてもネガティブな印象を持ちがちですが、ある意味ではレバレッジ効果こそ不動産投資の醍醐味。他人資本をうまく使うことで運用をより効果的なものにできるのです。

 

どうしても他人資本の使用を避けたいのであれば、その方にとって最良の運用方法は不動産投資ではないのかもしれません。


家賃設定は適正なのか

最後にそもそも論となってしまいますが、利回りの計算に使う家賃収入はあくまで現状の家賃設定で満室だった時の数字です。

 

その数字は保証されるわけでもなければ、ましてや今後ずっと続くわけでもありません

 

現状で空室の多い中古物件だとしたら家賃設定そのものに問題があるかもしれませんし、新築であれば実際の入居はこれからですからあくまで想定の家賃収入となります。

 

不動産業者が提示する利回りをそのまま鵜呑みにせず、自分で周辺の家賃相場を調べてみる必要はあるでしょう。似たような物件を築年数ごとにデータを集めることで、家賃の推移もシミュレーションすることができます。

 

この時により厳しい目で家賃設定をしておけば、その収支計画はより確実なものになっていくはずです。

(2016/01/20 文責:佐野純一)

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