賃貸経営の“最大の敵”とは…

「賃貸経営の“最大の敵”は何か?」と聞かれたら、あなたは何を思い浮かべるでしょうか。

 

その答は人によって違うかもしれませんが、実際に大家業を営んでいる私にとって、その答は明確です。

 

賃貸経営の“最大の敵”とは、即ちこれ「空室」

 

それ以外に答はありません。それほど「空室」は賃貸経営の成否を左右する大きな問題です。

 

日頃、不動産投資に関するご相談を受けている私のところには、既に収益物件をお持ちの方からの相談も多く寄せられます。賃貸経営をとりまく様々な問題の中でも特に大家が頭を悩ませるのは、やはり「空室対策」でしょう。

 

ところが、実際にその人が行なっている空室対策を聞いてみると、間違いとは言えないものの、あまり効果的とは考えられないケースに数多く遭遇します。

 

賃貸経営の最重要課題であるはずの「空室対策」に、なぜ効果的な手が打てないのか?

 

今回は自ら賃貸経営を行う「大家」であり、同時に「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)でもある“現役大家FP”と一緒に、「空室対策」について考えてみましょう。


「空室対策」ってなにができるの?

皆さんは、「空室対策」として具体的にどんなことを連想するでしょうか。

 

「リフォームをしっかりする」
「家賃を下げる」
「フリーレント期間を設ける」
「不動産業者の数を増やす」
「不動産業者に広告料を出す」
「内装を変える」
「新しい設備を増やす」
「家具を置いてモデルルーム化する」

などなど、様々な意見が出てくると思います。

 

実際に空室対策の打合せを行うと、大家と不動産業者の双方から多くのアイデアが出てきます。

 

どれも重要な意見であり、活発な議論が行われること自体は非常に良いことですが、コンサルタントとして客観的な視点でその場に立ち会うと、そのうちどんどん場が混沌としていき、結局「空室対策」として何をすれば良いのかわからなくなってしまう時があります。

 

誤解のないように申し上げておきますが、一つ一つのアイデアが決して間違っているわけではありません。ただ、そこに優先順位というものがないために、どこから手をつけていいかの判断できなくなってしまうのです。

 

そうならないためにも、空室対策を論じる前に全ての基本となる「決定的な事実」を大家も不動産業者も改めて認識する必要があるでしょう。

 

その決定的な事実とはつまり、「入居者はその部屋を見ない限り絶対に契約しない」ということです。


空室対策は2ステップで考える

部屋を探す時、募集図面やインターネットで得られる情報はごくわずかなものに過ぎません。

 

よほどの事情がない限り、その情報だけで賃貸契約をしようとする人はいないでしょう。必ず実際の部屋を確認したいと思うはずです。

 

たまに「ウチの管理している部屋は内見しないでも決まる」と嘯く不動産業者もいますが、これは特別に立地条件の良い物件などの極めて稀なケースです。また、部屋を見せないで貸すことは、後々「こんなはずじゃなかった…」というトラブルの原因にもなりますから、大家にとって危険な行為でもあります。

 

つまり、「実際の部屋を見ないと契約しない」ということは、募集図面やインターネットの情報では伝わりにくい部分をいくら改善して「空室対策」をしたとしても、そもそも内見する人がいなければ誰もそれに気がつかないことを意味しています。

 

そう考えれば、話はずっと簡単になります。

 

効率的な「空室対策」は、
@どうやって内見者を増やすか
Aどうやって内見者の成約率を上げるか
の二段階に分けて、それぞれの対応を考える必要があるのです。


対策@ 「どうやって内見者を増やすか」

それでは、それぞれの対策を考えてみましょう。まずは「どうやって内見者を増やすか」です。

 

自分が部屋を探す人になった気持ちで考えてみましょう。あなたがインターネットで部屋を探すとしたら、どんな条件を打ち込むでしょうか。

 

一般的には、エリア・駅からの距離・間取り・築年数などの優先順位が高いと思います。しかし、残念ながらこれらの属性は後から変更することはできません。もし自分が持っている物件でどれか弱い要素があったとしても、それは改善のしようがないものです。

 

その点をただ嘆いていても時間の無駄ですし、ましてやそこを言い訳にする不動産業者がいたとしたらビジネスパートナーとして失格です。大家としては「自分ができること」をしっかりやっていくしかありません

 

内見者を増やすために大家ができることは、大きく分けて3つあります。

 

@設備をグレードアップさせる

まず一つ目は「設備をグレードアップさせる」方法です。

 

具体的には浴室乾燥機や洗面化粧台などを後付することで物件としてのアピールポイントを増やし、それを募集図面やインターネットに反映させる形になります。

 

共用部であれば、宅配ボックスや防犯カメラを取り付けるなんてこともあるでしょう。無料のインターネットサービスも付加価値の高い設備です。

 

ただし、この方法はどうしても費用がかかります。そのおかげで部屋が埋まったとしても、その費用を回収するためには何ヶ月分もかかるかもしれません。

 

その割には、特に新築物件と比較した時には差別化がしづらいのも事実。この方法を行うのであれば費用対効果を慎重に見極める必要があります

 

A不動産業者を強化する

二つ目は「不動産業者を強化する」方法です。

 

現実的には、自分の物件を取り扱ってくれる業者を増やすことで情報の間口を広げるやり方と、広告料などで営業マンの士気を高めることで今あるマーケットを深堀りしていくやり方に大別されます。

 

その他の条件が揃っていれば有効な手段ですが、やはりこの方法だけで強行突破しようとしても、部屋を探している人に強引な印象を与えるだけでうまくいきません

 

ただ内見してもらえば良いというわけではなく、期待感をもって内見してもらわないとその後の展開に続かないからです(いくら良い広告を売っても、その商品自体に力がなければすぐに売れなくなるのと同じことですね−笑)。

 

B家賃設定を見直す

最後は「家賃設定の見直し」です。

 

不動産投資コンサルタントとして家賃の見直しの話をすると“無能”のレッテルが貼られそうですが(苦笑)、現役の大家である私から言わせてもらえば家賃とは「常に変動するもの」。上がる時もあれば、反対に下がる時もあるのは当然のことです。

 

日頃から自分の物件の適正家賃がいくらなのかを考察し続けるのが大家の義務ですし、「ずっと家賃が下がらない物件」などは自分で大家業をやったことない人間の絵空事でしかありません。

 

もちろん、家賃収入は賃貸経営の全てです。安易に家賃を下げるのは大家として決して賢明な手段ではありません。

 

ただし、そもそも内見に誰もこないようではその物件に未来はありません。勝負しようにも「土俵にすら上がっていない状態」だからです。

 

繰り返しますが、なにも闇雲に家賃を下げろと言っているわけではありません。

 

自分の物件を構成する様々な要素を考えて、部屋を探している人に「ちょっと見に行ってみようかな?」と思わせる家賃設定ができるかどうか

 

内見の数を増やす最大のポイントは、この点にあると言っても過言ではないのです。


対策A 「どうやって成約率を上げるか」

内見者の数を確保できるようになったら、戦いは次のラウンドの移ります。今度は「内見者の成約率をどう上げていくか」です。

 

一言で言ってしまえば、成約率を上げるには物件の印象を上げていくしかありません。「そんなの当たり前だよ」と思われた方、こんな風に考えたことはあるでしょうか。

 

「印象を上げる」=「想像を良い方向で裏切る」

 

実際に部屋を見る前に、誰もが何かしらの想像を巡らせるはずです。例えば、「この図面でこの築年数でこの家賃ならば、こんな感じの部屋かな?」といったイメージです。

 

その想像を良い方向に裏切ることができれば、物件の印象はぐっと良くなります。

 

例えば「“思ったより”キレイ」「“思ったより”収納がある」「“思ったより”広く感じる」「“思ったより”静か」など、なんらかの軽いサプライズがあれば賃貸契約に向けて大きく前進したと言えるでしょう。

 

また、「内見用のスリッパを用意しておく」「空気の入れ替えをする」「近隣の資料を置いておく」などの細かい演出も、そのサプライズを後押ししてくれます。ただ、あまり本質的でない部分にばかり注力してしまうと良い結果が得られないことが多いので注意が必要です。

 

なお、「なるべく家賃を高く設定したい」という場合はこの段階での勝負となります。

 

内見者にどれだけサプライズを与えられるかどうかで、相場より高い家賃がとれるかどうかが決まってくると言えるからです。

 

既に述べたように、始めの家賃設定が高すぎて内見者がいないようでは、勝負に持ち込むことすらできません。そのためにも、客観的かつ戦略的な家賃設定が非常に重要になってきます。


大事なのは「自分の物件をよく知ること」

こうして順序だてて考えれば、冒頭に挙げた様々な空室対策も、
@どうやって内見者を増やすか
Aどうやって内見者の成約率をあげるか

のどちらかに分類されるのが、お分かりになると思います。

 

「今、自分たちがどちらの話をしているのか」をしっかり理解するだけでも、空室対策の議論は飛躍的に効率が上がります。もともと内見者がいない状態が問題なのであれば、いくら成約率を上げる努力をしても空室対策の効果は現れません。

 

逆に、内見者の数は十分なのに決まらないのであれば、その部屋に成約を妨げるなにかしらの要素がないか、もう一度見直す必要があるでしょう。

 

大家業の基本は、なにはともあれ「自分の物件を良く知ること」です。文章にすると当たり前のことですが、実際にご相談を受けていると自分の物件のことをご存じない大家さんが多いことに驚かされます。

 

自分の物件をもっとよく知って、そのストロングポイントを押し出し、逆にウイークポイントを補うように考えていければ、自ずと効果的な「空室対策」にたどり着けるはずです。


(2017/04/19 文責:佐野純一)

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