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“お宝物件”は本当に存在するのか? 〜不動産投資の前に知っておくべきこと〜

「お宝物件」なんてホントにあるの?

不動産投資において「お宝物件」と聞くと、あなたはどんなことを連想するでしょうか?

 

ある意味では、全ての不動産投資家にとって“憧れの存在”と言ってもいい「お宝部件」。書店に行けば「私はこうしてお宝物件を手にいれた」といった内容の武勇伝が書かれた本が何冊も並んでいます。

 

「お宝物件」と聞くとそれだけで胸踊る人も多いでしょうし、魅力的なその言葉にとりつかれてしまう方も少なくありません。実際に不動産業者からは「お宝物件を紹介してください!」とご相談に来るお客様の話を聞くことがあります。

 

一方で、「お宝物件なんてホントにあるの?」という声も多く聞かれます。中にはもっと冷静に「お宝物件なんて、不動産業者のただの宣伝文句だよ」と疑っている方もいらっしゃるでしょう。

 

果たしてお宝物件は存在「する」? それとも「しない」?

 

自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)と一緒に、その疑問について考えてみましょう。


「お宝物件」が生まれるためには

まず「お宝物件」とは何を指すのか。その言葉の意味を改めて確認しておきましょう。

 

不動産投資の世界において「お宝物件」とは、一言で言えば「利回りの高い物件」のことです。

 

何%以上利回りがあれば「お宝物件」と呼ばれるかの明確な線引きはありませんが、例えば市場に出回っている物件の標準的な利回りが5〜6%だとした場合、その倍以上の10〜12%の利回りがあれば、それは立派な「お宝物件」と呼べることになります。

 

つまり、その物件がお宝かどうかのポイントは「家賃収入にたいして売却価格がいくらで設定されているか」という点に集約されるのです。

 

さらに言えば、家賃収入自体はエリア毎に相場が決まっていて、売主がコントロールできる幅は少ないですから、「売却価格をいくらで設定するか」でその物件がお宝物件になるかどうかが決まるということになります。

 

それでは、収益物件の価格はどうやって決められるのか。あなたが売主になったつもりで考えてみてください。

 

自分の所有する収益物件を売りに出そうと思った時、その売却価格については様々な判断基準があると思います。

 

例えば、「買った金額より高く売りたい」と思う人もいるでしょうし、もっと控えめに「アパートローンの残高がなくなればいい」と思う人もいるかもしれません。先祖から引き継いだ物件であれば、その不動産に対する“想い”などというものもあるでしょう。

 

これらも重要な要素であることは確かですが、収益物件の価格を決める際になんといっても基準となるのが「収益還元法」とよばれる方法です。


「収益還元法」とはなにか?

「収益還元法」とはその名の通り、「その物件が“稼ぐことができる金額”から物件自体の価格を導き出そう」という考え方です。

 

主に収益物件に用いられますが、自宅用のマンションにも応用されることがあります。新築マンションのギャラリーに行って「賃貸にだせばこのぐらいの家賃がとれますよー」などという営業トークを聞いたことのある人もいると思いますが、これなどは収益還元法に基づいた考え方になります。

 

具体的な数字で「収益還元法」を考えてみましょう。

 

例えば、あなたが所有している“年間家賃収入300万円”のアパートを売りに出すときは、どんな金額をつけるが妥当でしょうか

 

周りを見渡してみて、実際に売買が成立している収益物件の利回りが6%程度だとすれば、まずはそこが基準となります。それよりも利回りが低いと商品として競争力が落ちてしまいますが、だからと言って無闇に高い利回りを設定したのでは望むような金額で売却することができません。

 

「家賃収入300万円」で「利回り6%」の物件にするためには、「300万円÷6%」で割り戻して売却価格を決めてあげれば良いことになります。つまり年間家賃収入300万円のこの物件に5000万円の価格をつければ、無事に「利回り6%」の売り物件が出来上がるという訳です。

 

もちろん、実際にはその土地のポテンシャルや建物の構造・築年数でも売却価格を変わってくるでしょう。「うちは土地の評価額が高いからもっと利回りが低くても売れるだろう」とか、逆に「もう建物が古いからもう少し利回りを上げておかないと買い手がつかないだろう」という具合です。

 

また、売主の姿勢が「時間がかかってもいいからじっくり構えよう」なのか、「相続税を払わないといけないからとにかく早く売らなくちゃ」なのかでも、当然価格設定は変わってきます。

 

最終的には全ての要素を踏まえて総合的にその物件の売値が決まる訳ですが、収益物件の場合は「利回り」がその出発点となっているという点はしっかりと認識する必要があります。


「お宝物件」を収益還元法で考えると…

さて、話を「お宝物件」に戻しましょう。

 

上の例に出した「年間家賃収入300万円の物件」がお宝物件になるためには、利回りが12〜14%を確保しなければなりません。同じように収益還元法で計算すると、2150万円程度から高くても2500万円程度でこの物件は売りに出される計算になります。

 

計算上は簡単に「お宝物件」が誕生しますが、ここでよく考えていただきたいのが“その売却価格の理由”です。

 

競合物件が利回り6%で取引されている状況で、売主のあなたがわざわざこんな安い売値をつける理由が果たしてあるでしょうか?

 

よほど特別な事情がない限り、売主としては「できるだけ高く売りたい」と思うのが当然です。そう考えれば、自分の利益を放棄してまで「お宝物件」を世に送り出す理由など、売主には一つもないはずです。

 

もうお分かりですね。

 

収益物件の売却価格がどう決められるかの構造が理解できれば、世の中に「お宝物件」なぞ存在しないのは自明の理です。物件の価格にはそれぞれきちんとした理由があり、売主と買主の双方が「適正」と判断する金額で取引が行われる。経済の原則で言えば、これほど当たり前のことはないでしょう。


「お宝物件」とは“結果として”利回りが良くなったもの

こう書くと「でも、不動産投資本にはお宝物件が登場するじゃないか」とおっしゃる方もいるかもしれません。

 

そんな人はもう一度その本を読み返してみてください。本に登場するような「お宝物件(と呼ばれているもの)」は、結局のところ“後付け”でしかないことが分かるはずです。結果として「お宝物件」になったと言ってもいいでしょう。

 

例えば「空室が多かった物件を募集を工夫して満室にした」とか「建物に付加価値をつけることで賃料を上げることに成功した」など、何かしらの対策を講じた結果、購入時よりも家賃収入が上がるようなケースがあります。

 

この“上がった後の家賃収入”を購入時の価格で割ることで、本に書いてあるような「お宝物件」が誕生するのです。“物件購入時の家賃収入”で計算しているわけではない点には注意しなくてはいけません。

 

身も蓋もない言い方かもしれませんが、全ては“結果論”。それが「お宝物件」の正体です

 

似たような構造のものに「お宝保険」と呼ばれるものがあります。

 

これはまだ金利が高かった時代に契約したことで、ずっと高い利回りが確保できている「貯蓄型保険」を指す言葉ですが、この「お宝保険」も契約時からお宝だったわけではありません。

 

マイナス金利の現状から見るとお宝と呼ばれるような高利回りも、当時としては極めて「普通」の金利設定に過ぎなかったのです。その時代の感覚では「貯金するよりはいいかなぁ」という程度の気持ちで契約する人も少なくなかったはずです。

 

結果としてその後に金利が下がったのでその保険は「お宝」になったわけですが、逆に市場金利が上がっていたのならお宝どころか「クズ保険」と呼ばれていてもおかしくありません。これも“結果論”として「お宝」が誕生した一例です。


失敗談は闇に葬り去られる!

考えてみれば当然の話です。

 

実際に「お宝」と呼ばれるような昔の財宝や遺物も、始めからその辺の目に見えるところに転がっている訳ではありません。ある時は地中深く掘り起こしたり、ある時は海に沈んだ船を引き上げたりすることでようやく見つかるものです。

 

そう、お宝を自分の手中に収めるためには必ず何かしらの「発掘作業」が必要となってくるのです。

 

この発掘作業は決してタダではありません。どんな形であれ、金銭的・労力的・時間的コストの負担は覚悟しなければならないでしょう。

 

これらの負担は“不確定要素”という意味の「リスク」です。発掘作業をしたとしてもそこに必ずお宝が眠っているとは限らず、発掘にかかったコストが無駄になる可能性も充分にある(と言うより、むしろその可能性の方が高い)のですから。

 

それでも、不動産投資に限らず我々の世界では様々な局面でこうした発掘作業は行われています。そうした人たちは「リスクを背負わなければ永遠にお宝を手にすることができない」ことを知っているのです。

 

厄介なのは、こうした発掘作業のうち世の中で語られるのは「成功例」のみという点です。

 

成功している事例もあればその裏に失敗事例もある訳ですし、「成功例が声高に語られる」という事実から逆説的に考えるのであれば、失敗例の方が圧倒的に数が多いのは想像に難くありません(ダイエットと同じですね?笑)。

 

「ほんの一握りの成功例は、語られずに闇に葬り去られた無数の失敗例の上に成り立っている」と言っても過言ではないでしょう。

 

端的な言い方をすれば、不動産投資本に書いてあるような「お宝物件」は“結果論”の自慢話に過ぎません。結果論ですから当然再現性も低く、同じところを掘っても(同じやり方をしても)またお宝を手に入れられるかどうかは保証の限りではないのです。

 

実際に不動産投資を行うのであれば、そんな他人の自慢話に耳を傾けるよりも「なぜこの物件はこの価格で売られているか」をしっかり考察することの方が遥かに重要です。売値と買値の理由が分からないようでは、不動産投資での失敗は目に見えています。

 

ありもしない「お宝物件」に執着するのは単なる時間の無駄使いです。その時間を建設的なノウハウの蓄積に使った方が、よほど不動産投資成功への近道となるでしょう。


(2017/05/24 文責:佐野純一)

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