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「不動産投資」と「賃貸経営」の違いは? 〜二つの言葉にみる大家業の本質〜

「不動産投資」と「賃貸経営」は“似て非なるもの”?

「現役の大家」として、また「ファイナンシャルプランナー(FP)」として皆さんからのご相談をお受けしている私は、日頃から「不動産投資」という言葉をよく口にします。

 

また、話の流れの中では「賃貸経営」という言葉を使って、ご相談者の方に説明をすることもあります。

 

「不動産投資」と「賃貸経営」

 

普段は何気なく使っているこの二つの言葉ですが、果たして両者にはどんな違いがあるのでしょうか?

 

基本的には同じ意味のように思えますが、その一方で微妙なニュアンスの違いがあるような気もします。

 

そして改めて比べてみると、この両者の違いに“大家業の本質”のようなものが隠れているようにも考えられます。

 

今回は、「不動産投資」と「賃貸経営」という二つの言葉を比較しながら、自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が「大家業とはなにか」について解説していきます。


「不動産投資」は運用方法の一つ

まず、「不動産投資」という言葉の意味ですが、これは文字通り「不動産を使った投資」ということになるでしょう。

 

広い意味では不動産を題材にした投資信託である「RIET(リート)」もその範疇に入るでしょうが、一般的には「不動産の現物を使った投資」のことを指すと考えて良いはずです。

 

具体的な運用としては、部屋を貸して家賃収入(インカムゲイン)を得たり、物件を買った時より高く売って売却益(キャピタルゲイン)を狙う方法です。

 

あくまでも「投資」ですから、株や投資信託などの他の投資方法との共通点も多く見られます。

 

リスクの考え方や利回りの重要性などはもちろんのこと、証券運用で用いられる様々なテクニカル指数を不動産投資に持ち込んで分析を試みる動きも盛んです。最近ではAIを使って不動産投資を行おうとする会社まで登場してきました。

 

「賃貸経営」という言葉に比べてしまうと、「不動産投資」という言葉からはあまり“不動産現物の存在感”は感じられないかもしれません。

 

現在では我々が株券そのものを目にすることがないように、投資対象の商品である不動産を目の当たりにしなくても、不動産投資は成立してしまうからです。事実、海外不動産への投資などは一度も現物を見ないまま投資を行っている例も珍しくありません。

 

株式や投資信託と並んで、数ある運用方法の一つ。あるいは金融商品の一種類

 

「不動産投資」という言葉は、そういった意味合いを強く含んでいると言ってもいいでしょう。


「賃貸経営」は事業としての側面がある

一方の「賃貸経営」という言葉はどうでしょうか。

 

まず「不動産投資」との決定的な違いは、言葉の中に「キャピタルゲイン(売却益)」の意味を含んでいないという点です。

 

こちらも広義では「売却益を得るのも経営の一部」と言えますが、一般的には「賃貸経営」という言葉は「家賃収入を得ること」を指すと考えられます。その意味では「賃貸経営」の方が、「不動産投資」より少し意味の範囲が狭いと言えるかもしれません。

 

そう考えると「賃貸経営」は家賃を得るための仕事をすることであり、言い換えれば、「家賃収入を目的とした事業を行う」と定義付けできるでしょう。

 

ワンルームマンションの一室を貸しているだけの人にとっては、“事業”という言葉は少しばかり大袈裟に聞こえるかもしれません。ただ、規模の大小に関わらず、「部屋を貸して賃料を得るという行為」が事業の側面を含んでいるのは確かです。

 

スケールの差こそあれ、自分で行う事業ですから、全てを自分の責任と判断で行わなくてもなりません

 

そう聞くとなにやら大変そうですが、その分そこで得た利益は全て自分のものにできるのです。

 

大家業を数ある運用方法の一つと考えて他の方法と比較すると、この「自分の責任と判断の範囲」という点で他と大きく異なることが分かります。

 

株や投資信託の場合、自分で決められることはあまり多くはありません。極端なことを言えば、「いついくら買って」「いついくら売るか」だけと言っても過言ではないのです。言い換えればこれは、証券運用には大家業のような“経営的判断”は必要とされないことを意味しています。

 

私が口癖となっている言葉に、「大家業は不労所得ではない」というものがあります。

 

私も実際に経験してみて分かったことですが、大家には世間で思われている以上にやるべきことがたくさんあります。それらをきちんとこなすのは大変ですが、その反面とても自由度が高く、自分の判断を試すことができる場でもあります。

 

「賃貸経営」という言葉の裏には、他の運用方法にはない「“事業”としての側面」と「“経営的判断”が必要とされる点」が隠れているように思えます。


大家業には両方の要素が必要

結局のところ、「不動産投資」も「賃貸経営」も大家業の一面だけを切り取った言葉なのかもしれません。

 

単純に「投資」という観点だけで大家業を行っても、きっと上手くはいかないでしょう。大家に必要とされる“経営的判断”は、投資で行われる“運用的判断”とはまったくの別物だからです。

 

反対に「経営」というアプローチだけでも難しいかもしれません。資産運用という目的を持っている人にとっては不動産投資とは他の投資方法との競争の中に存在するものであり、キャピタルゲインを含めた“投資家目線”も必要になることがあるからです。

 

結局のところ、「不動産を活用してお金を稼ぐ」という大家業は「投資」と「経営」の両面を持っていると考えるのが正しいのでしょう。その時にどちらの面をより重要視するかで、我々は「不動産投資」と「賃貸経営」という二つの言葉を使い分けているのかもしれません。

 

その意味で、大家業はどちらか一方の要素だけでは成り立たないと考えるべきです。「投資」と「経営」の両方の要素が揃ってこそ、初めて大家業は商売として成立すると言えるはずです。


両者のバランスが成功の秘訣!

面白いのが、大家業にとってこの二つの要素の割合が必ずしも“フィフティフィフティ”ではないという点です。

 

世の中にはいろいろなスタイルの大家さんがいますが、「不動産投資」と「賃貸経営」の二つの要素の比率で、その大家さん独自のスタイルが決まってくると考えることができるでしょう。

 

「不動産投資」寄りの考え方でキャピタルゲインに重きを置く人もいれば、「賃貸経営」に考えに則って事業として安定した家賃収入を得ることに注力する人もいます。これはどちらが正しいということではなく、それぞれの大家さんにとっての“正解”があるものなのかもしれません。

 

ちなみに改めて振り返ってみると、私自身は「賃貸経営」の割合が多い大家だと思います。家賃収入(インカムゲイン)に重きを置いて賃貸業を“商売”と捉えていますし、実際に顔を合わせる入居者も生身の人間ですからテクニカル指数では測りきれないところがあると考えているからです。

 

もちろん、それが全ての大家にとっての正解とは限りません。その人の運用目標によって、「不動産投資」と「賃貸経営」の比率は自ずと変わってくるでしょう。

 

肝心なのは、あなたが目標を達成するための「自分のバランス」を見つけることです。


(2018/01/10 文責:佐野純一)

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