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投資用ワンルーム売却はイバラの道 〜驚くほど非常識な不動産業者の“常識”〜

投資用ワンルーム売却のご相談が増えている

最近、投資用ワンルームマンションの売却についてのご相談が増えています。

 

ご相談にいらっしゃる方にはいくつの共通点があり、特に購入されてから4?5年経った方からのご相談が多いように思えます。不動産業者の営業トークに乗って購入したものの、数年経つと「あれ? なんか思っていたのと違う……」と感じてしまうのかもしれません。

 

「収益物件」としてマンションの一室を所有する手法の難しいところは、いくら大家としていろいろ策を練ったとしても「建物自体の管理がコントロールできない」という点。

 

言い換えればこれは、「大事なマンションの寿命が他人任せになってしまう」ということでもあります。

 

実際に、収益ワンルームの集合体であるマンションで、管理状態が良いと言える物件は決して多くはありません。考えてみれば、こうした物件は「誰も所有者が住んでいないマンション」なわけですから、それも当然と言えます。

 

その意味において、一棟アパートに投資するよりもさらに出口戦略が重要となる投資用ワンルームマンション

 

現実的に出口とは「いつ売却するか?」がポイントになってきますが、実はワンルームの売却までの道のりにはいくつもの“大きな壁”が立ちはだかります。

 

今回のコラムでは、自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、投資用ワンルームマンション売却を阻む“不動産業界の非常識”を解説します。


第一の壁 「ローン残債」

売却希望者の前にまず現れるのが「ローン残債の壁」です。

 

近年のワンルーム業者のセールスでは「あなたも頭金なしでマンションが買えます!」が常套句。その結果、ほとんどの人がフルローンで購入することになっています。

 

そうしたマンションを売ろうとすると、売却価格がその時点のローン残債を下回ってしまうことは決して珍しくありません。つまり、マンションを売っただけでは借金を返せず、追加で資金を投入する必要があるのです。

 

追加投入できる資金が手元にあるのであればともかく、それだけの余裕がない場合はその時点でアウト。もはや所有するマンションを売ることもできず、もし賃貸のキャッシュフローがマイナスだとしても、その状況を甘んじて受け入れるしかありません。

 

こうした状況は始めから物件を「本来の価値以上の価格」で買っているために起こるわけですが、マンションが新築であれ中古であれ、不動産業者から購入する以上、そこに企業としての利益が乗っていますから、これは当然の結果とも言えます。

 

運用として不動産投資を考えるのであれば、そうした企業の利益を吸収して、なおプラスになる方法論を考えなくてはいけません。

 

そして、売却の時にもオーナーを待ち受けているのは不動産業者です。

 

現在の日本において個人で運用目的のワンルームマンションを購入しようというマーケットはかなり狭く、実際に買い付け申し込みを入れてくるのは、ほとんどが転売目的の不動産業者です。

 

このことはつまり、不動産業者がいわゆる「仕入れ価格」でその物件を購入しようとしていることを意味しますから、マンションを購入した時の買値との乖離が大きくなるのは必然でしょう。何年か所有して少しローン残債が減っていたとしても、それをはるかに凌ぐ勢いで売値が下がっていく構造になっているのです。

 

これが、売却時に手持ち資金が必要になってくる、あるいは手持ちがないために売るに売れない「ローン残債の壁」です。


第二の壁 「サブリース」

次に行く手を阻むのが、「サブリースの壁」です。

 

このコラムでも度々その弊害を取り上げている「サブリース」。そのサブリースがマンション売却時にも遺憾なく本領を発揮します。

 

「家賃が保証されるから安心ですよ」というセールストークで、購入時にセットでサブリース契約を結ぶ人が多いのですが(というより、むしろ「サブリースを前提でマンションを購入する」といった方が正確かもしれません)、いざ売却する時には今度はサブリースを外すことが必須条件となります。

 

買主が不動産業者であれば現行のサブリースを解約して自社でその業務を行いたいですし、個人で買う場合は利回りを大幅に下げるサブリース契約を解除したいと考えるのは当然です。実際のケースでも「サブリース解除」が購入条件になっているケースがほとんどです。

 

ただし、サブリース業者は「賃借人」として借家法に守られている存在。大家の一方的な都合で契約を解除することはできません。契約の解除には「双方の合意」が必要になります。

 

そのため、契約解除のためには多額の解約金(一般的に家賃の6ヶ月分)が必要となったり、最悪の場合、解除そのものができないこともあります。

 

また、サブリース業者によっては、実際に入居者が払っている賃料を教えてくれないところも多く、売却価格を決める要素となる「利回り」が正確に計算できないまま売りに出さないといけない事例もあります。

 

大家なのに「自分の部屋がいくらで貸し出されているかわからない」というなんとも皮肉な状況ですが、この場合はサブリース解除後に売却価格の清算を行わないといけないため、実際の売却価格が当初の予定を大きく下回る危険性が出てきます。

 

悪名高いこのシステムは、売却しようと思う時も「サブリースの壁」となって所有者を苦しめるのです。


第三の壁 「不動産業者の質」

最後に立ちはだかる壁が「不動産業者の質の壁」です。

 

一口に「不動産業者」と言っても、取り扱う業務は様々です。

 

賃貸の仲介を行う会社もあれば、管理専門の会社もあります。売買でもマイホームを得意とするところもあれば、収益物件に強みを発揮する会社もあります。

 

そんな中、投資用のワンルームマンションを専門的に扱う会社も少なくありませんが、どうもこの手の会社は不動産業界の中でも評判が良くありません。ヒドい場合には、同じ不動産業者同士でも敬遠されるような会社さえあるのです。

 

私がお手伝いした事例で、実際にこんなことがありました。

 

所有しているワンルームマンションの売却を希望されているお客様がいらっしゃったので、私がいつもお世話になっている不動産会社を通して、買い手を探してもらいました。

 

運良く買主が現れたので、サブリースを解除するべくサブリース会社に連絡をすると「ウチでもっと高く買い取ります」とのこと。

 

骨を折ってもらった不動産会社にも申し訳ありませんが、お客様にとっては少しでも高く売れたほうが良いのはコンサルタントとして当然です。

 

業者が直接買い取るのであれば仲介手数料もかからないので、お客様と相談してその申し入れを受けることにしました。

 

ところがです。契約の前日になってお客様から私のところに電話が入りました。

 

直前になってその業者が「買い取り金額を下げて欲しい」と言ってきたそうです。

 

その金額を聞いて私は驚きました。なんと100万円の値下げを要求してきたからです。

 

売値を100万円下げるのであれば、仲介手数料を払ってでも元の買主に売った方がよっぽどマシです。「それであればもう一度元の買主と交渉し直しましょう」とお客様と話し、契約自体を断りました。

 

今から考えると、明らかに“確信犯”だったと思います。

 

他の交渉相手を全て断らせておいて、契約の直前で大幅な値下げ交渉をする。こうしたやり取りに慣れていなければ、土壇場で言われてそのまま押し切られてしまう人もいるでしょう。

 

はじめからそれを見越して高い買い取り価格を提示していたのだとすれば、これほどタチの悪い話もありません。

 

もちろん、全てのワンルームマンション業者がこのような会社ではないでしょう。

 

ただ少なからずこの手の会社が存在するのもまた事実です。これがワンルームマンションの売却を阻む「不動産業者の質の壁」です。


その物件に「出口戦略」はあるのか?

収益用ワンルームマンションの営業マンは、ほとんどの場合、バラ色の未来しか語りません。買う時に「このマンションならいつでも売れますよ」と言われた人も少なくないはずです。

 

しかしながら、現実はそれほど甘くありません。今回のコラムで見てきたように、ワンルームマンション売却は“イバラの道”なのです。

 

区分所有に限らず、不動産投資とは出口戦略が重要となる投資手法です。

 

逆に言えば、そもそも出口戦略が描けないようであれば、はじめから不動産投資に手を出してはいけません。これから不動産投資の世界に足を踏み入れようと考えている人には、ぜひ覚えておいて欲しいルールです。

 

逆に、もしあなたが既に収益物件を持っていて、その出口戦略が不明確であるならば、早急に所有している不動産の行き先を検討したほうが良いでしょう。早ければ早いほど、描ける出口戦略の選択肢は多いはずです。


(2019/9/18 文責:佐野純一)

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