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中古物件の減価償却はこう計算する 〜節税より大事な出口戦略とは?〜

減価償却費が不動産投資成功のカギ!

このコラムでも再三触れているように、不動産投資において「減価償却費」は大きな役割を担っています

 

不動産投資の成否は、「減価償却費を味方にできるかどうか」にかかっていると言っても過言ではないかもしれません。

 

しかしながら、減価償却費の考え方を理解するのはなかなか難しいのも事実。特に中古物件に関しては、その計算方法はさらにややこしいものになっています。

 

不動産投資を中古物件からスタートさせる人も多い昨今。自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)と一緒に、実際の中古物件の計算方法を通して、減価償却費が担う節税よりもっと大事なその役割を考えてみましょう。


減価償却費のおさらい

まずは減価償却費のおさらいです。

 

「減価償却」とは税法上の概念で、建物などの固定資産を購入した時にその年度で一度に経費として計上するのではなく、税法上で決められた年数(「法定耐用年数」といいます)に分けて計上する仕組みのことを指します。

 

「何年かに分けて使うものは、それ相応の年数に割って経費計上しましょう」という考え方です。

 

住居用建物で言えば、法定耐用年数はそれぞれ、木造が22年、軽量鉄骨造が27年、RC造(鉄筋コンクリート構造)が47年となっています。耐久性の高い建物はそれだけ長く使えるので、耐用年数が長く取られているということになります。

 

また、土地に関しては減価償却費が認められない点には注意が必要です。土地は償却資産(=経年劣化するもの)ではないからです。

 

減価償却についての大事な点は、使用したその年に一括で経費計上できないという性質上、結果として次の年から「実際には出ていかない経費」が発生するということです。

 

このことはつまり、キャッシュフローと比較して税負担が少なくなることを意味しています。


減価償却費の計算方法

それでは、具体的にどのくらいの「実際には出ていかない経費」が生まれるのか。計算例で見てみましょう。

 

例えば、建物価格が5000万円の物件があったとします。本来であれば、この5000万円を建物本体と設備部分に分けてそれぞれの減価償却費を計算するのですが、今回は計算例をわかりやすくするためにすべて建物本体の価格とします。

 

新築物件の場合、建物の構造に合わせて各々の法定耐用年数で割ってあげれば良いわけですから、
木造 → 5000万円 ÷ 22年 = 227万円
軽量鉄骨造 → 5000万円 ÷ 27年 = 185万円
RC造 → 5000万円 ÷ 47年 = 106万円

がそれぞれ一年で経費計上できる金額となります。

 

並べて比較してみると、同じ5000万円の建物でもその構造によって一年で計上できる減価償却費が大きく異なることがよく分かります。

 

減価償却費が大きければ、もちろんその年の節税効果は大きくなります。しかしながら、一年あたりの減価償却費が大きければ大きいほうが良いかと言えば、一概にそうとは言えません。元の建物価格が同じ場合、一年の減価償却費が大きいということは、逆に継続期間が短いということになるからです。

 

一年あたりの減価償却費を多くしたほうが良いのか、それともその効果を長く持続させたほうが良いのか。両者にメリットデメリットがあり、どちらの形が自分の不動産投資の戦略に合っているのかをしっかりと検討する必要があります。


中古物件の場合はどうなる?

次に、中古物件を購入した時の減価償却費の計算方法を見てみましょう。

 

例えば、木造の法定耐用年数は「22年」です。仮に築25年の木造アパートを購入した場合、既にこの物件は法定耐用年数を経過していますから、税法上の資産価値はゼロ。減価償却費も1円も計上できないということになるのでしょうか。

 

結論から言えば、耐用年数を過ぎた物件であっても減価償却費は認められます

 

新築の場合に比べると少々複雑になりますが、中古物件を購入した場合の計算式は以下の通りです。

 

(法定耐用年数 - 築年数)+ 築年数 × 20%

 

つまり、築10年の木造アパートであれば
(法定耐用年数22年 - 築年数10年)+ 築年数10年 × 20% = 14年
がその物件の耐用年数となるわけです。

 

また、既に法定耐用年数を経過したものであれば、計算式の前半が必要なくなりますから
法定耐用年数22年 × 20% = 4年( ※小数点以下切り捨て)
と計算されることになります。

 

新築物件よりもさらに耐用年数が短くなりますから、建物価格が同じ5000万円だとすると、
築10年 → 5000万円 ÷ 14年 = 357万円
築25年 → 5000万円 ÷ 4年 = 1250万円

となり、かなり大きな「実際には出ていかない経費」が発生することになるのが分かります。

 

もちろん、築年数の経っている建物はそれ自体の価格も下がっているので単純に新築物件とは比較できませんが、いずれにしろ、この減価償却費が発生している期間は、かなりの節税効果が見込まれることは間違いありません。


節税を謳う不動産投資セミナーに注意!

不動産業者の中にはこうした節税効果を前面に押し出すことで、特に高所得のサラリーマンをターゲットに古い物件を売る手法をとる会社も存在します。古い物件の減価償却費が、給与所得分の税金も取り戻してくれる効果を生むからです。

 

しかしながら、ファイナンシャルプランナー(FP)としては、こうした目先の節税効果に目が眩んで闇雲に古い物件を購入するのはオススメできません。

 

そうです、ここまで見てきたように、減価償却費には「一年あたりの経費計上できる金額が大きければ大きいほどその継続期間が短くなる」という特性があることを忘れてはいけないのです。

 

言ってみれば、「耐用年数」と「経費計上できる金額」は表裏一体の関係

 

単年で考えれば経費計上できる金額が大きいに越したことはありませんが、その期間があまりに短いようでは考えものです。

 

耐用年数が終わったら、すなわち計上できる経費がなくなったら、今度は課税対象となる所得が大幅に増え、その分払うべき所得税や住民税も大きくなってしまう可能性があるからです。

 

下手をすれば減価償却費で節税できた分が、その後の数年の所得税住民税の増加で無に帰るなどいう事態にもなりかねません。

 

理論上は耐用年数が終了した時点で物件を買い換えれば新たな減価償却費を手にいれることができますが、その時の市場の状況で所有している物件が思った通りの価格で売れるとは限りません。

 

もし購入した時の価格を下回る金額でしか売却できず大きなキャピタルロスが生じるようでは、それこそ節税どころの話ではなくなってしまいます


減価償却費を味方にするか?敵にするか?

不動産投資を検討する時、単年の収支だけではなくローン返済期間中のキャッシュフロー表を作成するのが基本です。

 

新築の木造や軽量鉄骨造のアパートの場合、建物の法定耐用年数がローン期間より短いのが一般的ですので、耐用年数が終わる時点がキャッシュフロー表のターニングポイントになります。経費計上できる減価償却費がなくなることで急激に税負担が増え、資金繰りが悪化する可能性が高いからです。

 

中古物件を購入する場合はさらに早い時点で減価償却費がなくなります。そのため、当初数年の収支だけでなく長期的な視点で作成したキャッシュフロー表がより重要になってきます。

 

「不動産投資は出口戦略が大事」とよく言いますが、減価償却の考え方も出口戦略の大きなパーツの一つ。戦略によっては、予め購入する物件の築年数を絞り込んだ上でキャッシュフロー表を作成することも必要になってきます。

 

「減価償却費」を敵にまわすか、それとも味方につけるのか

 

それがあなたの不動産投資の成否を大きく左右するポイントであることは、充分に認識するべきでしょう。


(2017/12/27 文責:佐野純一)

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