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賃貸経営における「法人成り」の意味 〜不動産投資を“会社”で行うメリットとは?〜

賃貸経営における「法人成り」とは?

「法人成り」という言葉をご存知でしょうか。

 

法人成りとは、簡単に言えば「これまで個人事業主として行っていた事業を法人化すること」を指す言葉ですが、不動産投資や賃貸経営の世界でも、この「法人成り」は度々議論の対象になります。

 

以前から個人として家賃収入を得ていた大家さんが途中から法人になることもありますし、アパートを建てる地主さんが新たな法人を設立する場合もあります(厳密には後者は「法人成り」ではありませんが)。

 

なぜ賃貸経営において、このような法人を巡る議論が起こるのでしょうか。そこには「税金」にまつわる切実な問題があります。

 

今回のコラムでは、自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、不動産投資の「法人成り」を解説します。


個人の税金は「所得税」

結論から言えば、「法人成り」の意味、それは「税金の圧縮」に他なりません。

 

このことを理解するには、まず個人と法人の税金の違いを把握する必要があるでしょう。

 

個人がなんらかの形で得た収入に対してかかる税金のことを「所得税」と呼びます。

 

「収入」と「所得」の違いについては長くなりますので他のコラムに譲りますが、今回のお題に関して知っておいてほしい所得税の特徴は大きく二つあります。

 

一つは所得税が「総合課税」であること。そしてもう一つは「超過累進税率」であることです。

 

「総合課税」については、「特定の種類の所得は合計された上で税金が計算される」ということがわかれば大丈夫です。

 

例えば、会社からもらう給与所得や個人事業主が商売をして得た事業所得、そして家賃収入を示す不動産所得などはそれ単体で税金を計算するのではなく、合算した上でその人の所得税を求めることになります。

 

総合課税である以上、個人で専業大家をやっているという人でなければ、その人が得た不動産所得は何かしらの他の所得と合算されるという点に注意が必要です。


「総合課税」と「超過累進税率」がもたらすもの

なぜなら、この合算されて高く積み上がった部分にかかってくるのが「超過累進税率」だからです。

 

「超過累進税率」とは、その人が得る所得が高くなればなるほど税率が上がっていく仕組み。簡単に言えば「収入が多い人からいっぱい税金を取ろう」という、ある意味非常に安易な発想に基づいたシステムです。

 

具体的な数字で見てみると、所得が195万円以下の人に対しての所得税率はわずか5%に過ぎません。

 

これが所得の増加に伴って段階的に上がっていき、4,000万円を超える部分についてはなんと45%もの所得税率がかかります。おおまかには所得の半分が税金として持っていかれるようなイメージです。

 

これは、例え同じ額の不動産所得だったとしても、その人が得る他の所得によって手元に残るお金が大きく異なることを意味し、さらに言えば、家賃収入以外の所得が多い人ほど不動産所得から多くの税金を取られることを示しているのです。


会社の税金は「法人税」

ここで登場するのが「法人化」という選択肢です。そこには、個人と法人では税の考え方が根本的に違うという理由があります。

 

法人の収入に課される税金は、個人とは違い「所得税」ではありません。と言うより、そもそも法人には「所得」という概念がないのです。

 

法人に対する税金は、「入ってきたお金(益金)」と「出ていったお金(損金)」の差を利益とし、そこに大して「法人税」が課されます。

 

厳密には「法人税」の他にも「法人住民税」や「法人事業税」があり、これらの合計が「実行税率」と呼ばれたりしますが、この実効税率は所得税のような超過累進税率ではありません。

 

基本的にはどの会社にも一律の税率が適用され、さらに、いわゆる中小企業には軽減処置がとられています。

 

近年法人税は年々軽減されてきており、2018年には実効税率が30%を切ったと言われています。

 

中小企業の軽減処置に目を向けると、800万円まで利益に対しては実効税率が23〜24%程度と試算されています。


「所得税」と「法人税」の損益分岐点とは?

さあ、ここまでくれば話も見えてきました。

 

要するに「法人成り」とは、「所得税と法人税のどちらが税負担が軽いか」という問いかけへの答えなのです。

 

賃貸経営に的を絞れば、個人で得られる不動産所得は規模的に中小企業に該当する場合が多いでしょうから、法人化した場合の実効税率は23〜24%程度と予想されます。

 

この税率を所得税に当てはめると900万円以下の所得税率が23%となっていますので、ここが一つの損益分岐点となるでしょう。

 

つまり、給与所得や事業所得などの家賃収入以外の所得が900万円以上ある人であれば、個人として不動産所得を得るよりも法人化して法人の益金として扱ったほうが税負担が少なくなるという計算に成り立つのです。

 

あるいは賃貸経営の規模が大きく、不動産所得を合わせた所得の総合計が900万円を大きく超える場合も、法人化についてきちんと検討する必要があるでしょう。

 

ただし、ここでいう900万円はあくまでも「所得」のお話です。給与所得(額面)の金額と混同しないようにくれぐれも気をつけてください。


本当に「法人成り」した方が良いケースとは…

2005年に定められた会社法により、それまでに比べて法人の設立はずっと簡単になりました。

 

また、所得税だけでなく、相続問題に目を向ければ、個人では実現が難しい方法も法人であれば可能になるケースもあります。

 

しかしながら、法人化もメリットだけではありません。

 

特に、利益がなくても発生する法人税や決算処理にかかる費用など、個人事業主に比べてランニングコストがかかる傾向にありますから、その点には十分な注意が必要です。

 

不動産投資を「個人」で行った方が良いのか? あるいは「法人」として考えた方が良いのか?

 

確かに「税金の圧縮」はその判断の大きな材料となり得ます。

 

ただし、短絡的に所得金額だけで決めるのではなく、現在の資産状況今後の賃貸経営の方向性をよく考慮した上で、自分にあった方法を包括的に検討することが大切です。


(2019/02/20 文責:佐野純一)

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