日本人は「貯蓄型保険」がお好き!

世界の他の国と比べても、生命保険の加入率が高いと言われている日本。

 

そんな「生命保険大好き」の日本人に特に人気なのが、「貯蓄型」と呼ばれる保険です。

 

なにしろ損をするのが嫌いなお国柄か、資産運用の場合でも「得する可能性」を捨ててでも「損をする危険性」を排除しようとする人が多いのが日本人の特徴です。

 

生命保険に関して言えば、「掛捨て型」は損をするイメージが強いのか、「貯蓄型」の保険が長いこと不動の人気を得ていました。

 

ところが、昨年あたりから「貯蓄型保険」の勢いに陰りが見え始めています。理由はいくつかありますが、最も大きいものは、マイナス金利の影響で貯蓄型保険が以前に比べるとお金が貯まりにくい構造になったことでしょう。

 

そんな状況でも、これまでと同じように「貯蓄型保険」に加入するべきでしょうか。

 

いや、そもそも本当に「貯蓄型保険」は「掛捨て型保険」よりも優れているのでしょうか

 

「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、保険を売らないコンサルタントとしての立場で解説します。


生命保険を検討する時に何よりも大切なこと

まずは「貯蓄型vs掛捨て型」を論じる前にハッキリさせておきたいことがあります。

 

それは「生命保険は必ず入らなくてはいけないものではない」という点です。これは非常に大事なポイントです。

 

長年に渡る生命保険会社の営業活動の賜物か(苦笑)、現代の日本社会においては「大人なら保険の一つぐらい入っていないとダメ」といった声がよく聞かれます。

 

独身時代には保険に入っていなかった男性が、結婚を機に奥様に保険の加入を強く迫られたなどという話は、ご相談の中にもよく登場します。

 

改めて声を大にして申し上げますが、生命保険は「必ず入らなくてはいけないもの」では決してありません。そして、同時に「絶対に入ってはいけないもの」でもないのです。

 

肝心なのは、その人に“生命保険に入る理由”があるかどうかということ。

 

もっと詳しく言えば、その人に何らかの保障が必要となる可能性があり、なおかつ、それをカバーする最良の方法が生命保険であれば、加入すれば良いだけの話です。

 

ですから、保険の形や個別商品の比較対象を論じる前に「本当に生命保険が必要か否か」をよく検討しなければなりません。

 

保険屋は決して口にしませんが、「保険に入らない」という選択肢を常に持ち続けることが大事なのです。


生命保険は“コスト”に注目!

さて、話を「貯蓄型保険vs掛捨て型保険」に戻しましょう。

 

日本で「貯蓄型」が人気なのは「損をしたくない」という気持ちが背景にあるのは既に触れた通りですが、それであれば生命保険にかかる“コスト”についてきちんと論じる必要があるでしょう。

 

勘違いしやすいのですが、これは「毎月いくらの保険料を払っているか」ということではありません。保険金が給付されるような事柄(専門的には「保険事故」と呼びます)が起こらなかった場合、「どのくらいのお金が無駄になるのか」ということです。

 

「掛捨て型」の生命保険であれば、これは簡単です。なにしろ貯まるお金はない商品ですから、毎月の保険料がそのまま“コスト”と考えられます。

 

やっかいなのは「貯蓄型」の保険。一口に「貯蓄型」と言っても、毎月払う保険料のうち、どのくらいの部分が貯まるお金なのかはその商品によって全く異なるからです。

 

生命保険はあくまで「保障」を主眼においた金融商品ですから、「貯蓄型」と言っても銀行預金のように預けた翌日に全額が引き出せるわけではありません。

 

大抵の保険商品の場合、加入してすぐに解約した場合には戻ってくるお金(「解約返戻金」と呼ばれます)は払い込んだ保険料を大きく下回ることになります

 

それでも、保険会社にゆっくりお金を育てる時間を与えられるのであれば、その両者の差は少しづつ縮まってきます。このマイナス金利の時代でさえ、時間さえかければ払い込んだ保険料以上の解約返戻金を手にすることも不可能でありません。

 

ただし、そのために必要な時間は何十年という気が遠くなるような期間ですから、貯蓄方法として現実的と言えるかどうかは疑問が残ります


「混合型」の保険には注意が必要

より複雑なのが、一つの保険の中で「貯蓄部分」と「掛捨て部分」が混在しているタイプの商品です。

 

メインの主契約部分が貯蓄で、付属品である特約部分が掛け捨てであればまだ良いのですが、中には貯蓄部分がほんのおまけ程度しかない保険も存在します。

 

少し前に大手保険各社が販売に力を入れていた「アカウント型保険」などはその典型で、例えば毎月の保険料1万円のうち、貯蓄部分は100円だけといった設計もざらにありました。

 

非常に残念なことですが、そうした「アカウント型保険」のことも加入者の大部分が「貯蓄型」と信じて疑っていません。私が実際に行ってきた面談の中でも、「アカウント型」の真実を知ってご相談者が愕然とするといったシーンに何度も遭遇しました。

 

もし、今あなたが「毎月の保険料が高いなぁ」と感じているのであれば、まずは自分が加入している保険の“コスト”をはっきりさせることから始めると良いでしょう。

 

また、これから保険に加入するのであれば、月々の保険料のうちどの部分が“コスト”になるのかを意識することが肝心です。

 

毎月同じ1万円の保険料だとしても、その大部分が貯蓄されるのか、それとも“コスト”として消えていくのかでは、ライフプランに大きな差が出てくるからです。


“コスト”よりも大事なこととは?

「貯蓄型保険」にもいろいろあるとは言え、一般的には「掛捨て型」に比べて「貯蓄型」のほうが保険にかかる“コスト”は少ないと言えます。

 

しかしながらこれは、「貯蓄型」のほうが「掛捨て型」より保険として優れていることを意味するものではありません。生命保険を選ぶときには、“コスト”以上に大事なことがあるからです。

 

例えば、貯蓄性が高いからと言って毎月何万円もする保険に加入して良いものでしょうか?

 

確かに、貯蓄型保険は「必要な保障に備えながら、貯蓄もできる」という一石二鳥的な側面を持っています。

 

ただし、いつも私が面談で申し上げているように、この世の中に完全無欠な商品はありません。どんな商品も必ずメリットとデメリットを持っているのです。

 

「貯蓄型保険」の大きなデメリットは、長期間に渡って家計から出ていくお金が固定されてしまうこと

 

いずれ返ってくるお金だとしても、自分が必要なタイミングで必要な分だけ引き出せないのであれば、いざという時に困る可能性があります。

 

このような「現金化のしやすさ」のことを運用の世界では「流動性」と呼びますが、資産運用の観点で考えれば、ほとんどの「貯蓄型保険」の流動性は極めて低いと言えるでしょう。

 

実際のケースとして、「銀行に預けるよりマシ」と考えて「貯蓄型保険」に毎月多額の保険料を支払っている人は少なくありません。

 

しかしながら、こうした方のライフプランを作ってみると、この保険料がなんらかの障害になる場合があることに注意しなければなりません。住宅を買おうとした時に貯蓄の中から十分な頭金を出せないような場合などは、その典型的な例と言えます。

 

現時点だけでなく、将来に向けての支出をハッキリさせるのもライフプランの大きな役割の一つ。

 

長期間に渡る固定的な支出を決めるのであれば、あらかじめライフプランで「どの時点で」「どのくらいの」支出があるかを検討しておく必要があるのです


生命保険で「貯蓄」をするのは間違い!

端的に言えば、貯蓄だけを目的として「貯蓄型」の生命保険に入るのは間違いです。

 

お金を貯めたいのであれば、コツコツ貯金してもいいですし、NISA枠を使って投資信託の積立を行ってもいいでしょう。貯蓄の目的を老後資金に絞るのであれば、iDeCo(個人型確定拠出年金)だって有効な手段です。

 

「保障をつけながらお金を貯められる」からと言って、資産の流動性を損なってしまうのは大きなマイナス要因です。

 

ましてや、その保障が本当に自分に必要なものではなかったのであれば、なおさらです。どんな状況になっても貯蓄を守りたいのであれば、保険に偏らずに様々な形に資産を分散しておくべきでしょう。

 

生命保険は「貯蓄型」がいいのか、それとも「掛捨て型」がいいのか。

 

その答えは、保険の種類や加入する人の状況などによっても異なってきます。

 

ただし、覚えておいていただきたいのは、「貯蓄型保険」は、“その保障が必要”であり、なおかつ“ライフプラン上必要な資産の流動性を確保できる”という二つの条件を満たして、初めてその真価を発揮するものだということ。

 

「保険料がもったいないから」という理由だけで貯蓄型を選んでしまっては、お金が必要になった時に「やっぱり掛捨て型にしておけば良かった」と後悔することになるかもしれません。

 

一般論としてどちらが良いのかを論じるのではなく、自分のライフプラン上で全体のお金の流れをよく検討した上で、「自分にとってはどちらが正解か」を考えるべきです。

 

あっ、もちろん「生命保険に入らない」という選択肢も忘れないでください。それがあなたにとって“最良の答”なのかもしれませんから。


(2018/04/25 文責:佐野純一)

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