不動産投資の特徴@ 「ローリスクミドルリターン」

どんな運用方法であれ、投資を語る際に欠かせないのが「リスクとリターン」の関係です。

 

資産運用の世界では、「リスクとリターンは比例する」というのがある種の常識です。一般的に、大きなリターンを望むのであれば、大きなリスクを背負う必要があるとされているからです。皆さんも「ハイリスク、ハイリターン」という言葉を聞いたことがあるでしょう。

 

注意していただきたいのは、ここでの“リスク”とは「危険性」のことではなく、「不確実性」のことを指す言葉だという点です。あるいは、「ブレ幅」と言い換えてもいいかもしれません。

 

ですから「大きなリスク」とは「大きく儲かるかもしれないが、大きく損をする可能性もある」ということを意味し、反対に「リスクが小さい」とは「あまり儲からないけど、損する可能性も低い」状態を指します。ここを誤解すると、この問題を考える上で本質からズレていく可能性があります。

 

他の投資方法と比べた場合、不動産投資は「ローリスク、ミドルリターン」などと言われます。先ほどの理屈では「ローリスク、ローリターン」となるはずですが(笑)、少しだけリターンが高いようです。


なぜ「ローリスク」と言われるのか

なぜ不動産投資が「ローリスク、ミドルリターン」と言われるのでしょうか。その理由を考えてみましょう。

 

まず「ローリスク」ですが、これは先程も述べた通り「不確実性が少ない」「ブレ幅が少ない」という意味です。これは不動産投資の「価格変動の要素が比較的少ない」という点が、その理由に挙げられます。

 

株と比較すると分かりやすいかもしれません。

 

会社の株式は、その会社が急成長すれば買った価格の何倍にもなる可能性を持っています。反対に、もしその会社が倒産してしまえば、株式が一瞬にして紙クズ同然になる可能性も含んでいます。その意味で、株が「価格変動の幅が広い」と言えるでしょう。

 

一方、不動産投資はどうでしょうか。

 

よほど間違った買い物をしなければ、購入した物件が一瞬にして価値がゼロになってしまうという状況は考え難いものです。それこそ天変地異の類がない限りは、短い時間で大きな価格変動は可能性は低いと考えて良いでしょう。

 

つまり、ちゃんと物件を選ぶ眼さえ持っていれば、例えば3000万円を出して3000万円の物件を買うわけですから、価格変動のリスク(不確実性)は低いと言えるはずです。

 

もちろん、長い年月が経てば建物は老朽化してきますし、土地といえど価格が変動してきますから、その資産価値がずっと続く訳ではありません。リスクはゼロではありませんが、不動産投資が他の運用と比べると「ローリスク」と言われる所以はこんなところにあると言えます。


家賃収入は外的要因と直結しにくい

もう一つ、不動産投資の「ローリスク」を支えているのが、「家賃収入」という収益の特異性です。

 

例えば小売業のようにその日によって売り上げが変化する商売と比べると、賃貸経営で得られる「家賃収入」は安定したものであることが分かります。一度入居者が決まってしまえば、長いスパンでの継続した収益が見込めるからです。

 

また、家賃は「景気や為替などの影響を受け難い」とも言われています。円高や円安が進んだり日経平均株価が大きく動いても、それがすぐに家賃価格に直結する可能性は少ないでしょう。

 

つまり不動産投資は「物件の価格」「継続的な収入」の2点から、数ある運用方法の中でも「リスク(不確実性)が低い」と考えられているのです。


「ミドルリターン」の正体は?

もう一つの「ミドルリターン」はどう考えれば良いでしょうか。

 

何と比べてリターンを「ミドル」と呼ぶかは非常に難しいところですが、一般的に不動産投資の利回りは5〜7%程度と言われています。

 

この利回りは、成長している会社の株式や効率の良い投資信託には遠く及びませんが、一方で国内外の債券や先進国の外貨に比べればかなり高い数字です。もし不動産投資を「ローリターン」と呼ぶと、債券等をどう表現すれば良いのが困ってしまうかもしれません。

 

どこを基準にするかで判断は大きく変わってきますが、数ある運用商品を利回り順に並べていった場合、不動産投資が真ん中あたりに来るという考え方は的外れとは言えません。その意味では、不動産を「ミドルリターン」と呼んでも差支えないでしょう。

 

ただし、これは自己資金で不動産投資を行った時のお話です。ローンを組んで不動産投資を行う場合は、利回りはぐっと下がります。借入金に発生する金利は、言ってみれば「マイナスの利回り」のようなものだからです。こうしたケースでは「ローリターン」と呼んだほうがしっくりくるかもしれません。

 

一口に不動産投資と言っても、様々な考え方やアプローチ方法がありますが、まずは運用方法の全体像として「ローリスク、ミドルリターン」と捉えていただいて良いと思います。