実際不動産投資の始め方には2種類ある!

「一口に“不動産投資”と言っても様々なアプローチ方法があります。」 お客様と面談する時に私はよくこんな言葉を口にします。
「不動産投資」あるいは「賃貸経営」と聞くと、多くの人が「家賃収入で左団扇の優雅な暮らし」を連想されるようです。それどころか、「家賃収入」という言葉をそのまま「不労所得」と読み解く人も少なくありません。
確かに、昔からの地主さんや代々賃貸業を営んでいる人の中には、実際にそんな優雅な暮らしをしているケースもあるでしょう。世の中の「大家さん」のイメージを地でいくような人たちです。しかし、そんなケースだけしか「賃貸経営」と呼べないわけではありません。「不動産投資」とは、なにも「家賃収入で左団扇の優雅な暮らし」ばかりを指すものではないからです。
その人によって目的も違えば方法論も変わってくるのが「賃貸経営」。100人いたら100通りの「不動産投資のカタチ」があると言っても過言ではないはずです。
誤解のないように申し上げておきますが、安易な不動産投資指南本のように「不動産投資や賃貸経営は誰にでもできる!」と言うつもりはさらさらありません。むしろ、不動産投資はその人にあった“然るべき方法”で行わないと、失敗する可能性の高い運用方法だということを強調しておきたいと思います。
特にこれから始める人が気をつけたいのが、その入り方。「不動産投資」は根本的なアプローチの部分で、大きく2つのパターンに分かれます。
その一つが「資産運用コース」。そしてもう一つは「資産形成コース」。
自ら賃貸経営を営む「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、この両者の違いを説明します。「この入り口の部分を間違えてしまうと、不動産投資は失敗する」と言って良いほどの重要なお話です。
不動産投資の「資産運用コース」

“不動産投資”と聞いて多くの人が連想するのが、この「資産運用」パターンです。「アパート経営」や「マンション経営」と言えば、もっとイメージがつきやすいのかもしれません。
分かりやすいのが、親から収益物件を引き継いだ大家さんのケースです。建物に対してのローンを親の代で払い終わっていれば大きな出費はありませんから、不動産という手持ちの「資産」を「運用」して日々のキャッシュフローを生み出すことができます。
あるいは、土地だけを引き継いでその上に新しくアパートを建てた場合でも、土地ごと収益物件を購入したケースに比べ利回りは大幅に上昇しますから、エリアや規模によっては建物のローンを払い続けたとしても十分な資金を手元に残すことが可能でしょう。
これが一般的に考えられている“大家さん”のイメージで、まさに「家賃収入で左団扇」のパターンです。確かに、世の中にはこうした恵まれた境遇の人もいます。生まれながら大家になれる資格を持っていたという極々稀なケースです。
ローンは誰にでも組めるわけではない

中には、手持ち資金が乏ければ、金融機関から借入をすればよいと考える人もいるかもしれません。「借金」という他人資本の力を借りて運用効率を高める、いわゆる“レバレッジ効果”。不動産投資には欠かせない要素とも言えますが、実は誰にでもこの力が使えるわけではありません。
お金を貸す立場から考えてみると分かりやすいでしょう。まとまった家賃収入を得ることができる収益物件であれば、組むべきアパートローンも億単位の規模となります。融資をする以上、万が一ローンが滞った場合でも、「最悪でも貸した分だけは回収したい」というのが金融機関の本音であることは間違いありません。
そんな彼らが、実際にお金を貸してくれるのはどんなケースでしょうか。
「その物件にローン金額以上担保価値がある」
「その物件以外に同程度の担保価値のあるものを所有している」
「空室が多くなってもローン返済が滞らないほど他の収入を維持できる」
などが考えられますが、一般的に考えてこれら条件を満たせる人はそう多くはありません。結局は現状で大きな資産を保有している富裕層に限られてくるでしょう。
それでは、「土地や建物がない」あるいは「余剰資金ない」という人は、不動産投資をどのように始めれば良いのでしょうか?
この場合は、不動産投資へのアプローチ方法自体を変える必要があります。今手元に活用できる不動産や資金がないのであれば、なにか違う「別なもの」を自分の味方につけるしかありません。 そのアプローチ方法においてあなたの味方になってくれるのは、「時間」と「他人資本(=借金)」です。この両者を味方につけて不動産投資を行う方法、それがもう一つの「資産形成」コースです。
「資産運用」と 「資産形成」の違い

「資産運用」に比べると、「資産形成」という言葉は聞きなれないものかも知れません。あるいは、この二つの言葉を同じ意味として捉えている人も多いでしょう。
まずは両者の違いからご説明します。「資産運用」とは、今手元にある資産を“運用”してリターンを得ることを言います。“運用”と聞くと株式や投資信託などのいわゆる「有価証券」を連想する方が多いと思いますが、リターンがあるという意味では我々の身近な存在である銀行の預金も運用の一種です。
ただし、例えば1万円を銀行の普通預金預けたとしても、そのリターンは微々たるもの。その行為を「資産運用」と呼ぶには少し無理があります。反対に、1億円の元手があったとして、その資金を年利10%で回せたのであれば、利益は莫大なものになります。
このことからわかるように、「資産運用」は「大きな資産」を「高い利回り」でまわしてこそ、その効果が発揮されます。これは「運用に投入できる資金が多いほうが有利」ということを意味しますから、その点ではある程度手持ち資金がある人向けの方法と言えます。
「資産形成」は時間をかけることで成功する

それに対し、「資産形成」とは長い年月をかけて資産を“形成”していくことです。将来まとまった資産を作るために、少しずつコツコツと積み立てていくようなイメージを持てば分かりやすいでしょう。
積み立てる方法はなんでも構いません。貯金でも良いですし、NISAを使った投資信託でも大丈夫です。貯蓄型の生命保険を使って、半ば“強制的に”資産形成を行っていく人もいます。
今は手元に大きな資産がなくても、この方法であればすぐに始められます。つまり、その気になれば誰でも挑戦することができるのです。そして、「継続は力なり」の言葉通り、時間を味方につけることが資産形成を成功に導く秘訣です。
「資産形成」は言ってみれば効率的な資産運用の前段階のようなもので、これを怠っていきなり資産運用に入ってしまうと、先ほどの普通預金の例のように大きな効果を得られない可能性が高くなります。
不動産投資の「資産形成コース」

「資産運用」と「資産形成」。この二つを不動産投資に当てはめたらどうなるでしょう。
前者は、前述のように既に資産としての不動産があったり、大きな他人資本(=借入)を投入したりするパターンです。残念ながら、この手法は誰にでもできるというわけではありません。実行できるのは、既にある程度の資産を持っているか、多額の借入をできる信用力のある人に限られてしまいます。
ですから、その条件を満たしていない場合には「資産形成」から不動産投資に入るという方法を取るしかありません。不動産投資における「資産形成」とは、具体的にどういったことでしょうか。イメージしやすいのが、「物件をローンで購入して家賃収入でコツコツと返済していく」というケースです。
このやり方であれば、アパートローンを組んだとしてもそれを無事に返し終わった後には、自分の手元に不動産という「資産」が残ります。長い時間はかかりますが、自分の資金をあまり投入せずに不動産という「資産」を手に入れることができる点が大きなメリットです。
「時間」と「他人資本(=借金)」を味方にして資産を作っていく「資産形成」コース。言い換えればこれは、「家賃収入」という“他人のお金”で、「アパートローン」という“他人のお金”を返し続けることで、「不動産」という“自分の資産”を形成していく方法です。

「資産形成コース」2つの注意点

ただし、その道のりは決して平坦なものではありません。この「資産形成」コースを実行する場合、注意すべきポイントは二つあります。
一つ目は、「ローンを無事に返し終えること」。そして二つ目が、「ローン返済後も資産として価値が残るような物件であること」。
言葉にすると簡単ですが、実はこの二つを両立させるのは非常に難しいと言えます。現在のことだけでなく、何十年も先の未来まで想定して行動しないといけないからです。
ローンに関して言えば、まず物件が古くなるに従って、空室率と家賃下落率が上昇していくのは賃貸経営の性です。固定資産税等のランニンングコストはもちろん、経年劣化によって修繕費は増えていくでしょう。加えて不動産所得に対する税金も払わなくてはいけませんから、スタート時は家賃収入でローンを返済できていたとしても、それがいつまでも続くとは限りません。途中から手持ち資金を追加投入するようなケースは決して少なくないはずです。
それでも、アパートローンを返し終わった後に収益物件として稼働すれば良いのですが、もうその時点で物件がボロボロで資産としての価値が失われている場合もあります。 一棟アパートであればまだ土地が残るかもしれませんが、区分所有(マンションの一室)のケースでそうなってしまうと、建替えもできずにどうにも身動きが取れなくなることも考えられます。投資対象が経年劣化していくというのも不動産投資の大きな特徴の一つ。当たり前の話ですが、物件に資産価値が残らなければ「資産形成」にはならないのです。
多くの人が不動産投資を失敗するワケ

「他人資本(=借金)を使って自分の資産を形成する」と聞くととても魅力的ですが、そこには幾多の困難が待ち受けています。少なくとも、賃貸経営を「不労所得」などと考えている人は手を出さないほうが身のためでしょう。
不動産投資で失敗する人の多くが、この認識を誤っているのだと思います。つまり、自分は「資産形成コース」でのアプローチなのに、まるで「資産運用コース」ができているかのように振る舞った挙句、初期の状態が維持できず行き詰まってしまうのです。
それは不動産業者のセールストークを鵜呑みにした結果かもしれませんが、「資産形成コース」を走り切るのは決して簡単なことではありません。長い時間をかけて行う資産形成だからこそ、きちんとゴールにたどり着くためには最初の物件選びだけでなく多くの継続的な工夫が必要なのです。

