「新築ワンルーム投資」のご相談は多いが…

「新築ワンルームマンション投資で失敗した…。」
不動産投資に興味がある人ならば、一度くらいはそんな話を聞いたことがあるでしょう。職場などに強引な営業電話をかけてくる業者も多いため、「新築ワンルームマンション投資なんて詐欺でしょ」と思っている人も多くいます。悪い意味で“有名な不動産投資の方法”と言えるかもしれません。
しかしその一方で、世の中には数え切れないほどの投資用ワンルームマンションデベロッパーが存在します。そしてこのことは、実際にそうした物件を購入する人が決して少なくないという事実を物語っています。
実際問題、私のところに持ち込まれるご相談内容としても多いのが、この「新築ワンルームマンション投資」。果たしてその実態はどのようなものなのでしょうか? 自ら賃貸経営を営む「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)として、この手法に対する私の見解をまとめてみたいと思います。
「新築ワンルーム投資」 5つのデメリット

結論から言えば、私は「新築ワンルームマンション投資」には否定的です。それどころか、この手法は「不動産投資デメリットの集合体」とさえ思っています。あるいは「不動産投資を失敗する要素が全てつまっている」と言っても過言ではないでしょう。
逆に言えば、不動産投資の失敗例を学ぶのにこれほど良い教材もありません(笑)。ですから、ここで「新築ワンルームマンション投資」のデメリットをまとめておけば、あなたの今後の不動産投資にきっと役立つはずです。私が考える「新築ワンルームマンション投資」の欠点は以下の5つです。
- 売却損がでやすい
- 家賃の下がり幅が大きい
- 空室リスクが大きい
- 節税効果が薄い
- 資産価値が残りにくい
それぞれのデメリットを詳しく見ていくことにしましょう。
デメリット① 「売却損がでやすい」
もちろん物件によって差はありますが、一般的に「新築マンションは買った瞬間に値段が1~2割下がる」と言われています。これは収益用として購入した場合に限らず、自宅として新築マンションを購入した場合にも同じことが言えます。その理由は実に簡単です。新築マンションの価格の中には部屋そのもの以外の金額が含まれているからです。
マンションの本当の価格とは?

考えてみてください。収益物件であれば、デベロッパーはポスターやチラシなどの紙媒体からインターネットまで様々な広告をうちます。中にはタレントを起用して大々的な宣伝を行う会社もあります。また、自社物件を売るためにいろんな営業活動を行うでしょう。不動産投資を銘打ったセミナーを行うかもしれませんし、それこそ手当たり次第に営業の電話をかけまくるかもしれません。
こうした広告費や営業活動費はどこから出ているのでしょうか? もちろん売主であるデベロッパーが自腹を切るわけはありません。そうです、こうした費用は全て物件の販売価格に“転嫁”されているのです。
このことはつまり、新築マンションは売られた瞬間にこうしたデベロッパーの販売費用、さらにはデベロッパーの利益が償却されてしまうということを意味しています。たとえどんなに短い期間しか所有していなくても、次に売り出すときは本体そのものの価格で取引されますから、よほど不動産価格全体が上昇している局面でない限り、売却損が発生する可能性は高くなってしまうのは当然と言えます。
キャピタルロスを回収できるのか

不動産投資の観点で考えれば、新築マンションを購入することはいきなりキャピタルロス(売却損)を抱えこむことになると言っても過言ではありません。ここ数年の建設費の高騰により家賃収入で得られる利回りはそれほど高くありませんから、このスタート時点での損失を回収するのにはそれなりに時間がかかります。
賃貸開始から数年間は購入時の諸費用とキャピタルロスを回収する期間にあてられてしまう覚悟が必要となりますが、それでも回収できるのであれば幸運だと考えるべきでしょう。回収に時間がかかっている間に、次のデメリット「家賃の下がり幅が大きい」が忍び寄ってくるからです。
デメリット② 「家賃の下がり幅が大きい」
賃貸用のマンションが竣工して何年か立つと、どうしても入居者の入れ替わりが発生します。その場合、大家としては新たな入居者を募集することになりますが、この時また新築時と同じ家賃で貸すことができるかと言えば、その答は「NO」です。なぜなら、賃貸業界には「新築プレミアム」と呼ばれる家賃設定が存在しているからです。
「新築プレミアム」とは?

「新築プレミアム」とは、新築という点を前面に押し出すことで、似たような他の物件より高く貸し出す手法のことです。「新築」という付加価値を家賃に上乗せすると考えれば良いかもしれません。
当然ながら、この「新築プレミアム」は新築時の一回しか使えません。一度でも入居者が決まってしまえば、次の入居者に対しては新築プレミアムを除いた家賃設定で貸し出すことになります。もし賃貸の収支計画をずっと「新築プレミアム」がついた家賃で考えているのであれば、ここで早くも軌道修正を強いられることになります。
家賃収入とローン返済額の差がないようなケースであれば、「新築プレミアム」を使えなくなった時点でローン返済のために大家の持ち出しが必要になることもあるでしょう。新築時の家賃は言わば「スタートダッシュ」のようなもので、そのペースでいつまでも走り続けられるわけではないのです。
サブリース(家賃保証)が事態を悪化させる!

「そんな時のためにサブリース(家賃保証)があるじゃないか」と言う人もいるかもしれません。しかし、実はこのサブリースが家賃下落リスクを購入者の目から覆い隠す隠れ蓑になっていることに気が付くべきでしょう。
誤解している人も多いのですが、家賃保証とは「今後○年間に渡って家賃の○%を払い続ける」という契約です。つまり、約束されているのは「家賃を払い続ける」ということだけであって、「いくら払うか」については確約されていません。通常2年、長くても5年程度で家賃設定を見直すことになっている契約がほとんどで、サブリースを使ったとしても新築プレミアムはこの期間しか効力を発揮しないのです。
さらにサブリースはその後の家賃下落率をさらに加速させます。サブリース業者としては空室が出た場合は直ちに自分たちの損害となりますので、なによりも部屋を埋めることを最優先します。その結果、彼らは家賃下落率を加速させることで空室率を下げ、自分たちの利益を守るという行動に出るのです。
こうやって業者の利益構造から考えれば、サブリースが家賃下落リスクから大家を守るどころか、逆に事態を悪化させる危険性が高いということが理解できるはずです。
デメリット③ 「空室リスクが大きい」
大家業をやっていれば、たとえどんなに良い部屋であっても空室になることがあります。またすぐに次の入居者が決まれば問題ありませんが、時期によっては世の中の部屋探しの動きが鈍いこともあり、時には数ヶ月に渡って空室が続くことだってあり得るでしょう。入居者が決まらなければ当然想定していた家賃は入ってきません。その意味で、「空室リスク」は大家にとって最大の敵と言えるはずです。
ワンルームは「All or Nothing」

空室が発生した時、所有している物件がワンルームマンション一室だけだと状況はさらに深刻なものになります。なにしろ一部屋しかありませんから、家賃収入は「All or Nothing」。家賃が全額入ってくるか、それとも全く入ってこないかの二択しかありません。1円も家賃が入ってこなければ、アパートローン返済の全額をオーナーが負担するしかなくなります。もし自宅の分もローンがあり、そのローンと二重で払っていくような事態が長期間に渡れば、家計が破綻する可能性すらあります。
そうした状況は誰にとっても避けたいところですが、どんなにがんばっても賃貸経営から「空室リスク」を完全になくすことはできません。ただ、大家として対策をとることはできます。「空室リスク」を“なくす”ことをできませんが、“分散する”ことはできるからです。それには、部屋を一室ではなく複数持つことで「相対的に空室率を下げる」という手段が有効になります。
空室リスクを“分散”させる方法

具体例で考えてみましょう。3,000万円台で新築ワンルームマンションを買ったケースと、同じような金額で築古の一棟アパート(ワンルーム4戸)を買ったケースを比べてみたらどうなるでしょうか。
私の経験上、いくら築浅で空室対策を施したとしても一つの部屋が3ヶ月空いてしまうことは想定の範囲内だと思います。1年間で考えれば空室率は25%です。一方、4室のアパートで同じく空室率が25%になるということは、4部屋中1部屋が丸々一年間空き続けたということになります。こちらも可能性はゼロではありませんが、よほど問題のある物件でなければこうした事態は少し考えづらいと思います。
単純に両者を比較した場合、どちらのほうが現実に起こりうる可能性が高いかを考えれば、「空室リスク」を分散するという言葉の意味がわかるでしょう。「All or Nothing」のワンルームマンションでは、どうしても空室リスクが大きくなってしまうのです。
なお、このリスクに対してもサブリース(家賃保証)が隠れ蓑に使われますが、空室率は必ず次の家賃改定の際に反映されるという点は覚えておく必要があります。サブリース業者は自分たちの懐を痛める気などさらさらないのです。
→「新築ワンルーム投資はなぜ失敗するのか(後編)」に続きます。

