「入居率99%」という広告のウソ

「当社の物件は入居率が99%です!」

 

これはアパート建設会社や投資用ワンルームマンションのデベロッパーの広告でよく使われる宣伝文句です。

 

こうした広告を目にした時、あなたはどのように感じるでしょうか?

 

直感的に「そんなワケがない。ウソだ!」と感じることができたならば、あなたは大家業に向いているかも知れません。

 

どの業者のサイトを見ても同じような宣伝文句が並びますが、これだけ空き家問題が騒がれている中で、あっちもこっちも入居率99%だと信じるにはさすがに無理があります。

 

さらに言えば、もしそんなに簡単に入居率が「99%」の物件が手に入るとしたら、誰も不動産投資に失敗などしないでしょう。そうしたことが感覚的に分かる人は、きっと「賃貸経営」という事業を行う冷静さを備えているはずです。

 

結論から言えば、こうした「入居率99%」という広告は、もちろんウソです。顧客を引き付けるために、実際に大家業を営んでいる人間から見れば“驚くようなデタラメ”が声高に叫ばれているのです。

 

なぜ、この業界ではこんなことがまかり通っているのでしょうか。

 

自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、そのカラクリを解説します。


「入居率」はどうやって決める?

この問題を考える時、まずは根本的な疑問が頭に浮かびます。

 

「そもそも“入居率”ってどうやって決めているの?」

 

誰もが感じる素朴な質問ですが、実はこの問いに対しての明確な答えはありません。

 

法律的にも業界的にも「空室率」に関する明確なルールがなく、各々の業者が自分の勝手な基準で統計方法を決めているのが現状だからです。

 

その自分勝手な統計で導き出される「99%」という数字。その裏には大きな二つのトリックが隠されています。


トリック@ 「空室」の定義

一つ目のトリックは、「空室」という言葉そのものの定義です。

 

この言葉について業界内に共通ルールが存在しないのは既に述べた通りですが、ある大手不動産会社が出版した本には、空室の定義を以下のように設定していました。

 

「入居者が退去して内装工事が完了し、いつでも次の入居者が住める状態にある部屋」

 

この定義を聞いて素直に納得する大家が世の中にどのくらいいるものでしょうか。

 

この説明からは、大家業を営む者と不動産業者との感覚の隔たりを感じざるを得ません。大家にとって「空室」の定義とはもっと明確なものです。

 

「家賃が発生していない状態の部屋」

 

“賃貸経営”という観点で考えれば、当然の話です。

 

家賃が発生していないのであればその部屋は「空室」であり、部屋の状態は関係ありません。逆に言えば、誰も住んでいなくても家賃が発生しているのであれば、その部屋は大家にとって「空室」ではないのです。


賃料が発生しない期間は結構長い…

一般的に、住人が退去してから内装工事が完了するまでには2週間程度の期間がかかります。退去時に部屋の中を確認するまでは作業内容が決定できないため、退去してすぐに工事を行うのは難しいからです。

 

この本を書いた業者は、この時点で既に「2週間の空室期間」を無視していることになります。

 

さらに、内装工事が完了したその日に内見があって、すぐに入居の申し込みが入ったとしても、その日から家賃が発生するわけではありません

 

実際に家賃がカウントされるのは早くても申し込みから2週間程度、現住居との退去の兼ね合いでそれ以上の期間を設けられることも珍しくないのは、一度でも部屋を借りたことのある人であれば分かるはずです。

 

つまり、一度退去者が出てしまったので以上、どんなにうまく次の入居者が見つかったとしても1ヶ月程度の「家賃空白期間」が生まれてしまうということになるのです。

 

1ヶ月と言えば1年間の約8%に相当します。2年に一度の契約更新に最低限の空室期間が発生したとしても空室率は4%になります。ということはつまり、空室率を1%に抑えるためには一つの部屋に8年以上同じ人に住んでもらわないといけない計算になります

 

反対に考えれば、入居率を99%にするためには空室期間を1年間で3日、2年間で6日以内に抑えなくてはいけません。それが現実的な数字かどうかは誰の目にも明らかでしょう。

 

その本を出版したのは投資用ワンルームマンションを扱う草分け的な存在の会社で、しかも「ウチはこんなに良心的です」とかなり自慢げに書いてありました。

 

裏を返せば、他の業者はもっとひどい「空室」の定義をしていることになりますから、このことからも「空室」という言葉の意味そのものが不動産業者によっていかに都合よく捻じ曲げられているかを伺い知ることができます。


トリックA 「統計」の取り方

二つ目のトリックは「統計」の取り方です。

 

簡単に言ってしまえば、業者にとって都合の良いように最大限入居率が高くなるような統計方法を採用しているのです。

 

一般的に多く見られるのが、ある特定の日を取り出して集計を行う方法です。その会社の管理する物件のうち、ある特定の日に何件の「空室」があるかをカウントするわけです。

 

その結果、例えば1000件の管理物件のうち「空室」が10部屋であれば、その業者は「入居率99%」と大々的に宣伝することになります。

 

この「空室」の中に内装工事前や既に申し込みがあった「家賃の発生していない部屋」が含まれていないことは想像に難くありませんが、それ以上にこのような統計の取り方は大家にとって意味がありません。大家業は“点”でなく“線”で考えるべきものだからです。

 

大家にとって「ある特定の1日」を抽出して計算した空室率にどれほどの価値があるでしょう。

 

不動産投資の流動性の低さを考えれば、大家業とは5年10年のスパンで取り組むことで初めてその成果を挙げられるものです。その意味で、たまたま入居率の高かった特定の1日があったとしても、その人の賃貸経営にはなんの影響も及ぼしません。

 

言い方を変えれば、「1日だけ大家をやります」という方法が現実的でない以上、「ある特定の1日」の入居率もまた全く意味のない数字ということになります。

 

常日頃から“空室リスク”と戦っている大家からしてみれば、特定の日の入居率だけを取り出して鬼の首を取ったように騒ぐのは、実際に大家業をやったことのない人のたわごとにしか聞こえません。

 

自分で賃貸経営を行うのであれば、最低でも年単位で入居率を算出しなければ、それは意味のある数字とはならないでしょう。


“不動産業者のウソ”を見破れ!

「“不動産業者の理屈”に騙されないでください」

 

日頃から私のコンサルティングでは相談に来た人にそんなアドバイスをしています。この「入居率99%」などという宣伝文句は、そうした恣意的に事実を捻じ曲げた“不動産業者の理屈”の最たる例でしょう。

 

繰り返しになりますが、本当に99%の入居率を実現するためには、入退去時に発生する家賃の空白期間が1ヶ月で済んだとしても、全ての部屋の入居者に8年以上住み続けてもらう必要があります。

 

そんな数字はとても現実的なものではありませんし、逆に考えれば、もしそんな物件を簡単に手に入れることができるのであれば、不動産投資に失敗する人などこの世の中に存在しないはずです。賃貸経営において、最大の敵は「空室リスク」だからです。

 

少しシニカルな言い方をすれば、そうした“不動産業者のウソ”を見破ることこそが、あなたが不動産投資で成功するための重要な第一歩かもしれません。

 

物件を売りつけることが目的である業者の理屈で不動産投資を考えるのではなく、あくまでも「あなたにとって」どんな方法が良いのかを考えることこそが肝心です。

 

あなたもぜひ「自分の不動産投資のカタチ」を考えてみてください。


(2018/10/10 文責:佐野純一)

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