「高収入な“だけ”の人」は不動産投資に失敗する?

「高収入」という言葉に悪い感情を持つ人はあまりいないでしょう。

 

現代社会において「高収入」は一つのステイタスであり、「高収入の人」はそうでない人にとって憧れの存在であることも多いはずです。

 

しかしながら、不動産投資の世界ではそうした「高収入の人」が失敗する例が後を絶ちません

 

知らない人からすれば「なぜ収入の多い人が失敗するのか」という疑問を持つかもしれませんが、実はこの現象は意外でもなんでもなく、不動産投資というビジネスの構造を考えれば、ある意味で「当然」とも言えます。

 

いえ、それどころか「高収入な“だけ”の人」あれば、不動産投資に手を出してはいけないとさえ言えるでしょう。

 

自ら賃貸経営を行う「現役大家FP(ファイナンシャルプランナー)」が、なぜ高収入な人が不動産投資に失敗するのか、その理由を解説します。


「資産家」と「高収入」は根本的に違うもの

我々がよく耳にする言葉に「資産家」というものがあります。

 

似たようなものに「富裕層」という言葉がありますが、こちらは「一定以上の現預金を保有している人」のことを指します。

 

それに対して「資産家」は、現金に限らず土地などの現預金以外の資産を持つ人を含めるもので、日本にはこういった形の“お金持ち”も多く存在します。

 

よく勘違いをされる点ですが、この「資産家」と「高収入の人」とは本質的に全く別のものです。

 

「え? でも高収入なら自然と資産も増えていくよね」と思われた方、ごもっとも。

 

たしかに世の中にはそういった人たちもいますが、実際に“お金の相談”を受けているFP(ファイナンシャルプランナー)の立場から見ると、「高収入で、なおかつ資産が増えていく人」はどちらかと言えば少数派のように感じます。

 

多くの「高収入の家庭」では、収入が増えるとそれに比例して生活レベルも向上していき、結局手元に残るお金が大きく変わっていないという現象が見受けられます。

 

こういった人たちは「高収入の人」ではありますが、「資産家」ではありませんし、将来的にもそうなる可能性は少ないでしょう。

 

このコラムでは、このタイプを「高収入な“だけ”の人」と呼ぶことにします。「資産家」と「高収入な“だけ”の人」は決して同じものではなく、その違いは明らかです。


不動産業者がターゲットにするのはどんな人?

さて、今度は収益物件を売る不動産業者の側から考えてみましょう。

 

そもそも彼らはどんな人をその営業のターゲットにするのでしょうか?

 

それはもちろん「物件を買える人」です。

 

業者が売主の場合にせよ、あるいは仲介手数料を取るにせよ、売買契約が成立しないことには彼らには一銭も入りません。いくらその人に熱意があっても、どんなに人として素晴らしい人物でも、不動産業者は「物件が買えない人」には見向きもしないのです。

 

それでは「物件が買える人」とはどんな人でしょう。

 

手元に潤沢な資金がある「富裕層」は、当然それに当てはまります。

 

そしてもう一つが「銀行からお金を借りられる人」となり、ここには富裕層を含む「資産家」の他に「高収入な“だけ”の人」も選択肢に入ってきます。

 

世の中にいる現金で収益物件を購入できるような「資産家」の絶対数は限られていますから、自ずと不動産投資業者のターゲットは「高収入な“だけ”の人」へと絞られていくわけです。


レバレッジ効果が機能しない理由とは?

「借りたローンは家賃収入で返せばいいから、将来は家賃収入が手にできますよ!」

 

不動産投資の営業マンはこんなセリフで「高収入な“だけ”の人」に収益物件を売りつけようとします。

 

借金することを「レバレッジ効果(梃子の原理)」と言い換え、なんとか金融機関でローンを組ませようとしますが、残念ながら現状ではこの梃子はうまく機能しません。

 

理由は簡単です。収益物件の高止まりが数年来続いているために、借入金が梃子として役割を果たせていないからです。

 

確かにローンを家賃収入で返済していくのは、“資産形成”としての不動産投資の一つの形ではあります。

 

ただそれは、あくまでも借金が梃子としての役割を担ってこそ実現できるもの

 

物件の値段が高く(=利回りが低く)、金融機関の審査が厳しい(=金利が高い)という現状では、毎月の収支の段階でマイナスが発生するのがデフォルトとなっています。

 

ここに毎年の固定資産税や退去時のリフォーム代、生活設備の取り替えや建物の経年劣化を加味していけば、不動産業者が言うような「ほっといても資産形成ができる」という状態からは程遠いのが現実だということは誰の目にも明らかです。


大事なのは「いくら稼いでいるか」より「いくら持っているか」

そんな現状でも不動産投資での資産形成を成功させる方法があるとすれば、それは「ローン部分を圧縮していく」しかないでしょう。

 

購入時にある程度の頭金を出してもいいですし、そうでなくても継続的にローンの繰り上げ返済を行うことで借入割合を減らしていけば、物件が古くなって経済的価値を失う前に自分の資産とすることができるかもしれません。

 

ただ、「頭金を出す」にしろ「繰り上げ返済をする」にしろ、それを実行できるのは「資産家」の人だけです。

 

「高収入の人」であれば繰り上げ返済は可能かもしれませんが、「高収入な“だけ”の人」にはそれを望むべくもありません。

 

いくら稼ごうとそれを右から左に使ってしまうから「高収入な“だけ”の人」なわけですし、逆に言えば、繰り上げ返済ができるような人であれば、そもそも「高収入な“だけ”の人」にはならないはずです。

 

ですから、「高収入な“だけ”の人」は現状の不動産投資の世界において業者に狙われやすく、実際に始めることも可能ですが、結果として成功を収めるすることが難しいのです。

 

それが、高収入の人が不動産投資に失敗する例が増え続けている理由となります。

 

誤解を恐れずに言えば、不動産投資において重要なのは「いくら稼いでいるか」ではなく「いくら持っているか」なのかもしれません。

 

収入がそれほど高くなくても、収益物件として立地条件の良い土地を持っている人の方が、「高収入な“だけ”の人」に較べて遥かに成功の目があるでしょう。

 

その意味では、不動産投資に向いているのは「高収入の人」ではなく、「資産家」だと言えそうです。


「家賃収入で生活したい」→「まずは1億円ご用意ください」

不動産投資という言葉はなぜか人のロマンを掻き立てるのか、「家賃収入で暮らしたい」という希望を持つ人に私も度々遭遇します。

 

ただ、既に述べてきたようにそれを実現できるのは一部の「資産家」だけです。

 

その人が望む暮らしのレベルにもよりますが、単身者であれば1億円、これから子育ても考えているような家庭であれば2億円程度の資産が“現時点”で手元にないと、「家賃収入での暮らし」はただの夢物語で終わってしまうでしょう。

 

ましてや、高収入で借入はできるけどもお金が貯まらないような体質の人、つまり「高収入な“だけ”の人」は決して手を出してはいけないのです。

 

こんなことを書くと「じゃあ、収入も高くなく、資産を持っていないなら不動産投資は無理なの?」という質問を受けるかもしれません。

 

これ以上不動産投資で痛い目にあう人が増えないように敢えて明言しますが、その答えは「Yes」です

 

少なくとも物件の価格が高騰している現在(2022年1月)では、不動産投資は「資産家にのみ許された運用方法」と言っても過言ではないはずです。

 

不動産投資に向いていない人が無理矢理始めたとしても、良い結果になることはありません。結局、物件を売りつけることに成功した不動産業者を喜ばせるだけに終わるでしょう。

 

これまで何度も申し上げていることですが、不動産投資は特別優れた運用方法ではありません。他の方法と同じように、メリットもデメリットも存在する「数ある資産運用の形の一つ」に過ぎないのです。

 

ですから、あまり一つの形式に拘らずに、さまざまな運用方法を模索してみることが重要です。あなたにあった資産形成の形がどこかにきっとあるはずですから。


(2022/01/19 文責:佐野純一)

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