改めて「お金の“普通”」を考えてみよう

“普通”

 

私たちが日常の会話の中で何気なく使う言葉の一つです。

 

話す相手との共通認識をベースにしてコミュニケーションを図る便利な言葉ですが、これが「お金の問題」となると、この“普通”というワードは意外と取扱いの難しいものと言えるかもしれません。

 

私のような「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)にとっては、ともすると「お金の問題」を解決する妨げになる言葉であり、使い方に注意が必要です。

 

なぜ、“普通”という深い意味もなく使われる言葉がお金の問題解決の障害となるのでしょうか。

 

今回のコラムでは改めて「お金の“普通”とは何か?」を考えてみたいと思います。


「普通の収入があれば、普通の生活ができる」と言うけれど…

お金の相談の中で、どんな時に“普通”という言葉が登場するのでしょうか。

 

それは、ライフプランが自分の想像と違った時、さらに言えば「自分の想像よりも悪かった時」です。

 

言うまでもなく、ライフプランとはファイナンシャルプランナー(FP)にとってコンサルティングの基本。将来的なお金の流れを可視化することで、その人のお金の問題点を洗い出していくものです。

 

もちろん、お金に対する考え方は人それぞれ。決まった正解があるわけではありません。

 

多くの貯蓄があっても堅実に暮らす人もいますし、反対に全財産が財布の中に入るぐらいでもまったく気にしない人もいます。

 

それが「その人にとっての正解」であれば問題がないわけで、ファイナンシャルプランナー(FP)の役割は、その人が「自分の正解」を導き出すお手伝いをすることと言えるでしょう。

 

その意味では、その人の「お金の正解」こそがその人の「お金の“普通”」なのかもしれません

 

ところが、いざ作成したライフプランが自分の想像を下回った時、こんなセリフが相談者から飛び出すことがあります。

 

「普通の収入があるから、普通の生活ができるはず…」

 

あるいは

 

「普通の人より稼いでいるから、普通の人よりお金を使ってもいいはず…」

 

具体的な数字を積み立てて作ったライフプランです。その結果には明白な根拠があるわけですが、それでも自分の想像を下回ったことを認めたがらない人もいます。

 

そのために、自分の中の“普通”を考えの拠り所にして現実を否定しようとするのかもしれませんが、これは極めて厄介な状況です。

 

“普通”という概念があまりに曖昧なために、建設的な解決の方法論を導き出すのが難しくなるからです。


収入と支出、それぞれの“普通”とは?

そもそも人は、お金に関してなにを“普通”と考えるのでしょうか?

 

入ってくるお金、つまり「収入」に関してはまだわかりやすいかもしれません。

 

会社員であれば、自分の周りの人と変わらないようであれば、それが“普通”と考えられるでしょう。

 

あるいは、年末に会社からもらう源泉徴収票には支払金額、いわゆる「額面」が記載されていますから、それを世の中の平均値と比べることも可能です。

 

令和2年9月に国税庁が発表した民間給与実態調査によると、日本人の平均年収は436万円となっていますので、単純に考えるのであれば、400万円代前半の給与を会社からもらっている人は「“普通”の収入」と解釈できます。

 

一方の出ていくお金、「支出」の方はどうでしょうか。

 

これはその人の年齢や家族構成、生活様式によっても大きく異なりますが、こちらもそれぞれのケースで統計が出ています。

 

総務省統計局が発表した「家計調査(令和2年)」によりますと、一般的な生活費は、単身者であれば月に約15万円、四人家族の場合は月に約31万円となっています。

 

この数字が“普通”だとすれば、単身者は平均収入でもやっていけそうですが、四人家族となると税金や社会保障を引いた金額(いわゆる「手取り」)では“普通”の生活もままなりません

 

当然、共働きの家庭が増え、現在ではその割合は全世帯の70%近くにのぼると言われています。


支出の“普通”はかなり主観的

ただ、ここまではあくまでも統計上のお話です。

 

実際に“お金の相談”を生業としている身としては、こうした統計上の数字を自分の“普通”と考えている人はほとんどいないように思えます

 

特に支出に関しては、個人の育ってきた環境差、そして家族構成などの現在の環境差の影響が大きいために、自分の“普通”を感覚的に捉えている人が多いように感じます。

 

この「感覚的」を言葉にするのは難しいのですが、強いて言うなら「ほどほどのストレスを感じている状況」でしょうか。

 

欲しいものをなんでも買うのではなく、ある程度の優先順位をつけて、我慢するところは我慢する。

 

そんな「ほどほどのストレス」を感じながらお金と向き合っている人がほとんどのはずで、その日常がその人の“普通”となっているケースも多いでしょう

 

ただし、そうしたストレスも個人の主観でしかないわけですから、結局「“普通”のお金の使い方」とは個人差がかなり大きいものであることは想像に難くありません


「普通の収入」では「普通の暮らし」はできない?

厳しいことを言うようですが、結婚して子育てをしている人が平均年収だった場合、その人が描く“普通の生活”を維持し続けることは難しいでしょう。

 

ここでいう“普通の生活”とは、平日は人気のランチを楽しみ、週に何回かはお酒の席に赴き、帰宅前にはコンビニで買い物をする生活。

 

家族で住むのに十分な広さの家に住み、年に何度かの家族旅行では奮発し、数年に一度は最新機種の携帯に買い替える。そんな誰もが想像できる“普通の生活”です。

 

たとえ今現在はなんとかなっていて「貯金ができないなぁ」程度しか思っていなくても、教育費や老後資金などの将来的な支出に耐え切ることはできません

 

仕事をしている現役時代は余裕があったのに、リタイアした途端生活に困るような高齢者の話をよく聞くと思いますが、これなどはその典型的な例と言えるでしょう。

 

「“お金の相談”の専門家」として、日頃皆さんの生の声を聞いていて感じることですが、現代の日本社会に於いては「普通の収入」と「普通の支出」の乖離が発生しているように思えます。

 

これは、平均年収が20年ほど大きな変化がない一方で、物価の上昇が確実に起こっていることが主たる原因と考えられますが、その結果、今の日本には「“普通”の収入があっても“普通”の生活ができない」という大きな矛盾が発生しているのです。


「中の上」の人が“普通”にこだわると…

その矛盾に気がついていない人が多い状況では、「周りと同じくらいだから大丈夫」という理屈は通用しません

 

私の経験上、特にこの矛盾を受け入れることに抵抗を示すのが「中の上」ぐらいの収入がある人のように思えます。年収にすると800万円を超えるあたりの層でしょうか。

 

平均よりも高い年収を得るということは、もちろんその裏に人知れぬ大変な努力があるものです。一部の例外を除けば、これまで人一倍仕事をしてきているでしょうし、現在も組織の中で大きな責任を負っている人たちでしょう。

 

そんな人の中には、当然「他人より稼いでいる」という強い自負を持った人もいるはずで、それであれば「普通より稼いでいるのだから、普通より使って何が悪い!」と考えてしまっても無理はないのかもしれません。

 

しかし、その“普通”はあくまでもその人の中での基準でしかありません。現にライフプランが成り立っていないのであれば、まずは現状を受け入れて改善に向けて努力していく必要があります

 

言うならば、その人の“普通”を一度リセットしなければならないでしょう。問題を認識できなければ、その問題を解決することは決してできないのですから。

 

それが、自分が考える“普通”にしがみつくことがお金の問題解決への大きな妨げとなる理由です。


「一億総中流」社会の後遺症?

現役世代の中でも大きな割合を占める現在40代50代の人たちは、「一億総中流」と呼ばれた社会で育ってきました。

 

国民の大部分が自分の生活水準が「中流」と感じていた時代がそこにあったわけですが、そんな時代であれば、あるいは“普通”という社会全体の共通概念が成立し得たのかもしれません。

 

ただ、「格差社会」と叫ばれて久しい現在、多くの人が納得する“普通”は既に失われています

 

もはや“普通”が幻想(ファンタジー)となっているにも関わらず、そこに依存してしまう人が多いのは、ある意味で「一億総中流」社会の後遺症と言えるでしょう。

 

いつも申しあげていることですが、「お金の正解」は人それぞれです。

 

“普通”という名の幻想に囚われることなく、自分でライフプランという人生の設計図を描くことで、自分の正解を見つけることが重要です。

 

それが、紛うことなきあなたの「お金の正解」なのですから。


(2021/11/17 文責:佐野純一)

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