改めて「減価償却」を解説!

資産運用として不動産投資を考える時、「減価償却」という概念は避けて通れません。

 

「減価償却」という言葉自体は当サイトにも度々登場していますので耳にされたこともあるかと思いますが、その意味を正しく理解している人は意外と少ないようです。

 

この「減価償却」とは税法上の一つの考え方です。

 

「税金」と聞くだけでアレルギー反応をおこして脳が活動を停止してしまう人もいますが、この「減価償却」は不動産投資や賃貸経営において非常に重要なキーワードです。

 

敢えて言いましょう、「減価償却を知らずに賃貸経営の成功はあり得ない!」と。

 

今回は、自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、そんな「減価償却の考え方」を分かりやすく解説していきたいと思います。


「減価償却」の前に「固定資産」 を理解しよう

減価償却とは、簡単に言えば「固定資産をどうやって経費に計上するかという考え方」です。

 

…はい、よく分かりませんね(笑)。

 

「固定資産」というのも税法上の考え方で、要するに「それは何年かに渡って使えるでしょ」というもののことです。

 

例えば、打合せのために電車で移動したとします。この時の交通費は当然経費となるわけですが、これはあくまでもその場限りのもの。切符を買ったとしても後に何かが残るわけではありません。

 

それに対し、仕事の移動手段として自動車を購入した場合はどうなるでしょうか。あくまで業務として使うものですので同じく経費として認められますが、電車賃と同じように扱うわけにはいきません。購入した自動車は一回乗ったらおしまいではなく、何年も乗り続けることができるからです。

 

こうした何年もの間に渡って使い続けることができるものを税法上は「固定資産」と呼び、帳簿上の処理は他の経費と分けて考えられます。

 

どうしてそんなことをする必要があるのでしょうか?

 

実は「固定資産」を他の経費と同様に扱ってしまっては、税務署にとって甚だ都合の悪いことになるからなのです。


「減価償却」は税務署の都合!

例えば、3月末が決算の会社があったとしましょう。

 

3月に入った時点でこの会社の予想利益は1億円。このまま行けば法人税はかなりの額に上ります。

 

税金を払いたくないこの会社の経営者は考えました。

 

「利益となる1億円をなんとか経費として使えないだろうか。そうだ! 1億円で自社ビルを買ってしまおう!」

 

確かに経費を使えば会社の利益を圧縮できます。利益1億円の会社がそのお金で自社ビルを買ったら利益は「ゼロ」。この経営者の考え通り、これで税金を払わずに済むのでしょうか?

 

答えはもちろん「No」です。

 

こんなことが認められたら、それこそ誰も税金を払わなくなります。決算に合わせて利益分の大きな買い物をすれば良いわけですから。

 

それでは税務署も商売あがったりです。国はこうした事態を防ぐために、ビルや自動車のように長く使うことができるものを「固定資産」と呼び、一回で全額を経費計上できないように定めました。

 

その代わり「固定資産は長い期間をかけてちょっとずつ経費計上していいよ」という概念を生み出したのです。

 

これが「減価償却」です。

 

この「長い期間」というのも納税者が勝手に決められるものではなく、固定資産の種類によって予め決められています。これを税法上の「耐用年数」と呼びます。

 

例えば、事務所用のコンクリート建造物であれば耐用年数は50年と決められています。

 

先ほどの例で1億円の自社ビルを新築で購入した場合、土地の価格を含まず単純計算で「1億円÷50年間=200万円」となりますから、その年に計上できる経費は200万円のみ。残りの9800万円に関しては利益として法人税がかかるという仕組みになっています。
(分かりやすくするため計算を単純化しています。実際の計算はもっと複雑です)


税務署の狙いを逆手にとれ!

こう書くと減価償却とは納税者にとってはあまり良い制度には思えないかもしれませんが、実はその逆。

 

特に不動産投資において、減価償却がとても重要になってきます。

 

なぜでしょうか?

 

確かに購入した年に全額を経費計上することはできません。しかしこのことを逆に考えれば、その後長い期間にわたって「実際には出ていかないお金を経費として計上できる」ということを意味します。総合的に考えれば、このことは非常に効果的な節税につながるのです。

 

思い出してください。

 

税金とは決して「収入」によって決まるものではありません。あくまでも収入から経費を引いた「所得」で決まるものです。

 

本当は出ていかないお金を経費として計上できるのであれば、実際のキャッシュフローに比べて所得を少なくできる、つまりは税負担を軽くすることができるのです。

 

この方法をうまく使えば、家賃収入を得ながら不動産所得にかかる所得税を「ゼロ」にすることも可能です。

 

それどころか不動産所得は給与所得や事業所得などの他の所得と相殺できますので、減価償却費で不動産所得をマイナスにできるのであれば、他の所得に掛かる税金まで減らすこともできるようになるのです。


具体例で見る減価償却の“凄さ”

簡略化した計算例で考えてみましょう。

 

ある人が自分の土地に木造アパートを建てたとします。建築費の2200万円は全額自己資金でまかない、家賃収入は年間100万円と設定します。

 

木造建築物の耐用年数は22年間ですから、一年間に減価償却費として計上できる金額は「2200万円÷22年間=100万円」となります。100万円の家賃収入に対し100万円の経費。この時点で不動産所得はゼロになりますから、これに掛かる所得税もゼロとなります。

 

さらに固定資産税や火災保険料、不動産業者への手数料などの実際に出て行くお金は経費として計上出来ますから、この分は不動産所得がマイナスとなり、他の所得から差し引くことができます。

 

結果として家賃収入に所得税がかからないだけでなく、他の収入に対する所得税も圧縮することができるのです。

 

これが「減価償却」の凄さです。


生兵法は大怪我の基!

そのためか、他に所得がある方、特に高収入のため税負担が重い方が、節税目的で不動産投資を始めることがあります。あるいは、節税の観点から収益用物件の購入を勧める不動産業者も少なくありません。

 

ただし、これはかなり危険な考え方です。生兵法で挑むとそれこそ大怪我の基になってしまいます

 

ここまでこのコラムを読んた人ならお分かりでしょう。

 

減価償却を用いた節税は効果的なものではありますが、いつまでも続くわけではないのです。そうです、予め「耐用年数」が決められているからです。

 

上記の計算例では分かりやすくするために触れませんでしたが、実は建物の減価償却は「建物本体」「設備」に分けて計算されます。

 

さらに設備も工事見積りを元にいくつかに区分され、それぞれの耐用年数で一年あたりの「減価償却費」が割り出されます。

 

先ほどの2200万円の木棒アパートも、実際には建物本体と設備部分に分けられ、それぞれの耐用年数が適用されることになるのです。

 

どの設備がどれくらいの耐用年数なのを細かく覚える必要はありません。

 

しかし絶対に理解しておいていただきたいのは、設備ごとの耐用年数が経過するたびに「減価償却費は年々減っていく」こと。

 

そして、建物本体の耐用年数が過ぎてしまえば「減価償却費そのものがなくなってしまう」という事実です。

 

このことはつまり、たとえ家賃収入がずっと変わらなくても後になって税負担が増加することを意味します。家賃収入から差し引ける経費が減っていくからです。

 

この構造を理解しておかないと、「節税目的に収益不物件を購入しても、効果があるのは最初の数年だけだった…」という結果になってしまいます。

 

ましてや古い物件に対してアパートローンを組んで購入している場合では、始めから家賃収入だけではローン返済額を賄えず、大家が他の収入からその分を補填しているケースもあります。

 

たとえ始めの数年間に大きな節税効果があったとしても、その後の長いローン負担で節税分が帳消しになった、あるいはマイナスになったとなどというのも実によく耳にするお話です。


「減価償却」の出口戦略を考えよう!

不動産投資において非常に大きな武器となる「減価償却」。

 

しかし、「減価償却」はその意味と使い方をしっかり理解しておかないと自分自身を傷つけることにもなりかねない、いわば「諸刃の剣」でもあります。

 

繰り返しになりますが、減価償却は「耐用年数」という“賞味期限”がある考え方です。減価償却をうまく利用するのであれば、予めその出口戦略も用意しておかなくてはなりません

 

不動産投資において本当に大事なのは、長期的なスパンで考えた事業計画です。「減価償却」の考え方も、その事業計画の一部としてしっかりと理解しておくべきでしょう。


(2016/02/24 文責:佐野純一)

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