「遺言書」と聞いて何を連想しますか?

「遺言書」と聞くとあなたは何を思い浮かべるでしょうか?

 

もしかしたらミステリー小説やテレビドラマを連想する人もいるかもしれません。そこまでいかなくても、なにか自分とは“縁遠いもの”と感じている人は少なくないはずです。

 

ところが、最近になって遺言書の存在が改めてクローズアップされています。

 

当然、遺言書とは「死」を前提にしたものですから、好んで話題にするようなものではないかもしれません。しかしながらその一方で、相続時の揉め事を軽減する力を持っているのも確かです。

 

2015年1月に相続税の増税されたことも遺言書が注目される原因の一つです。相続税の対象となる家庭が大幅に増えたことで、遺言書の重要性が改めて認識されました。

 

ただ、遺言書がその本当の効力を発揮するのは「節税」の話ではありません。もっと別のところに、遺言書の真の役割があります。

 

遺言書の真の役割、それは「分割問題」で遺族が揉めるのを防ぐことです。

 

「遺言書なんてお金持ちにしか関係ないよね」と思っている人も多いかもしれませんが、遺産総額が少なくても、いやむしろ少ない方が揉めやすいのが遺産の「分割問題」。適切な遺言書の存在で、相続が“争族”になるのが回避された例も少なくありません。

 

今回は「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が、揉めない相続のために「遺言書の基本的な知識」について解説します。


遺言書には3種類ある

一口に「遺言書」と言っても、実は大きく3つの種類に分かれるのをご存知でしょうか。

 

その3種類とは
・自筆証書遺言
・公正証書遺言
・秘密証書遺言

となります。

 

同じ遺言書でありながら、作り方や相続発生時の手続きに違いがあるこの3種類の遺言書。それぞれの特徴とメリットデメリットを知ることが、適切な遺言書を残すための第一歩です。

 

一つずつ詳しく見てみましょう。

 

簡単に作れる「自筆証書遺言」

「被相続人(遺言を残す人)が自ら文面と日付を書き、その上で署名捺印する」のが、自筆証書遺言です。

 

テレビドラマなどに登場するイメージに一番近いのがこの形かもしれません(笑)。資産家が一人遺言書をしたためるようなシーンは誰も目にしたことがあるでしょう。

 

自筆証書遺言のメリットとデメリットはどのようなものでしょうか。

 

メリット

@作成が簡単…発起用具と紙さえあれば被相続人単独で書ける
A費用がかからない…上記道具を用意すれば事足りる
B内容を秘密にできる…被相続人単独で作成するので内容を秘密にできる

 

デメリット

@無効になる危険性がある…専門家のチェックがないため、書き方等で法的要件を満たしてない場合がある
A紛失・偽造の可能性がある…保管状況によっては紛失したり偽造されたりする場合がある
B存在自体が明確でない…被相続人が持っているだけでは、死後にその存在が公にならない場合もある
C家庭裁判所による検認が必要…検認についての詳細は後述

 

信頼性の高い「公正証書遺言」

「公証人に作成してもらった上で、原本を公証役場で保管してもらう」のが、公証証書遺言です。

 

被相続人が公証役場に赴き、公証人に口頭で遺言の内容を話す形をとります。法律の専門家である公証人が、その内容に基づき遺言を作成するという段取りです。

 

また、この時相続財産に関して利害関係のない2人以上の証人の立会いが求められます。相続人(遺産を受け取る人)は原則として証人になれませんので、注意が必要です。

 

メリット

@内容に法的不備が出ない…専門家が作成するのため不備が出る心配がない
A保管の信頼性が高い…公証役場で保管されるため紛失・偽造の心配がない
B存在が明らかになる…証人により遺言書の存在が相続人に伝わる
C家庭裁判所による検認が不要…検認についての詳細は後述

 

デメリット

@手間がかかる…証人を手配した上で公証役場に行く必要がある
A費用がかかる…公証役場での作成・保管に対する費用がかかる
B内容を秘密にできない…証人が立ち会うため、内容が外部に漏れる可能性がある

 

保管を重視した「秘密証書遺言」

「遺言書を自分で作成して封をし、その上で公証役場で保管する」のが秘密証書遺言です。自筆証書遺言と違い、遺言書の全文を自筆する必要はありません。

 

また、公証証書遺言と同じく証人が必要ですが、あくまで封をした上での「保管」の立会いですので、遺言書の内容が証人に伝わらない点は大きく違います。

 

メリット

@内容を秘密にできる…封をして公証役場に持ち込むので秘密が保たれる
A保管の信頼性が高い…公証役場で保管されるので紛失・偽造の心配がない
B存在が明らかになる…証人により遺言書の存在が相続人に伝わる

 

デメリット

@無効になる危険性がある…自書証書遺言と同じく、専門家によるチェックがないため
A費用がかかる…公証役場での保管に対する費用がかかる
B家庭裁判所による検認が必要…検認についての詳細は後述


「検認」とは何か?

3種類の遺言書のうち、自筆証書遺言と秘密証書遺言には家庭裁判所による「検認」が必要です。「検認」とは聞き慣れない言葉だと思いますので、補足しておきましょう。

 

検認とは、簡単に言えば「遺言書の現状確認」です。

 

自筆証書遺言と秘密証書遺言は、その性質から書いた本人にしかその内容は分かりません。遺言書が執行されるということは当然その時点では本人が亡くなっている訳ですから、遺言書の元の内容を証言できる人が存在せず、ともすれば偽造や改ざんの恐れがあります。

 

そこで遺言書が初めて封を切られる時点で、相続人立会いのもとにその内容を明確にしておく手続きをとります。それが「検認」です。

 

誤解の多い点ですが、検認は遺言書の有効・無効を判断するものではありません。あくまでも家庭裁判所で遺言書の“最初の状態”を確認する作業です。その遺言書が法的な要件を備えているかどうかはまた別の話となります。

 

なお、検認を受けなくても遺言書そのものの効力に影響はありませんが、後々偽造や改ざんの可能性を指摘されてトラブルになる可能性が残されてしまう点は留意するべきでしょう。


遺言書は“最高のプレゼント”?

それぞれにメリットとデメリットがある3種類の遺言書。各タイプの特徴を理解した上で、自分にあった形を有効に活用するべきでしょう。

 

冒頭に申仕上げた通り、遺言書は「死」を前提にしたものだけにやはり作成することに心的抵抗がある人は少なくありません。「そのうちに…」と思っているうちに結局作らずじまいだったなどというケースもよく耳にします。

 

これもあまり知られていないことですが、実は遺言書は何度でも作成することができます

 

書き直された場合は、民法上日付の新しい方が効力を持つことになっています。つまり、前の遺言書をわざわざ破棄しなくても、新しい遺言書で打ち消した部分は自動的に新しい内容が優先されるのです。

 

そう考えれば、遺言書を作成するのにも必要以上に身構えることもないのかもしれません。先延ばしにして思わぬ事態を招くよりは、ある程度の状況が見えたところで一度作成しておいて、変更の必要が生じたらその都度書き換えていくという方法もとれるはずです。

 

遺産を巡る争いをなくすのが、遺言書の本来の目的です。その意味では、遺言書とは被相続人が遺族に贈ることができる「最後にして最高のプレゼント」なのかもしれません。


(2016/11/16 文責:佐野純一)

よく読まれている人気ページ

著書のご案内

関連テーマの記事


〜マネー設計が開く、幸運のトビラ〜

「ファイナンシャルプランナー(FP)って何をする人?」
「興味はあるけど何を相談したらいいか分からない…」
「お金の不安、誰に相談すればいいんだろう?」
「どんなことができるのか、まずは話を聞いてみたい」

 

そんなあなたのために“初回無料相談”を実施中です。

 

 

実際に弊社のコンサルティングをご利用いただいたお客様の声をご紹介しています。

アクセス数の多い記事




TOPへ