「建ぺい率」と「容積率」の違いを知っていますか?

建物を建てる時、設計の基本となるのがその土地が持っている「建ぺい率」と「容積率」という二つの数字です。

 

建築基準法の基礎ですから、言葉自体は耳にしたことがある方も多いと思います。しかしながら、それぞれの意味をよく理解していなかったり、あるいは両者を取り違えたりしているケースも見受けられます。

 

既に土地をお持ちでこれから自宅やアパートを建てようと考えている方はもちろん、注文住宅を建てるために土地を探そうとしている方や、既存建物の建替えを検討している方にも、ぜひ知っておいてほしい「建ぺい率」と「容積率」。

 

この二つの言葉の意味がしっかり分かれば、その土地にどんな建物が建つかが自ずと分かってきます

 

その意味では土地のポテンシャルを決定付けると言っても良い「建ぺい率」と「容積率」。自ら賃貸経営を行う「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が解説します。


「建ぺい率」で決まるコト

「建ぺい率」は「建蔽率」とも書きますが、簡単に言えば「土地面積の何パーセントの部分まで建物を建てていいかを決めるルール」です。

 

いくら自分の土地とは言え、好きなように建物を建てて良いというわけではありません。ほとんどのケースで空地(建物がない土地)を残すように決められています。

 

例えば、建ぺい率が50%であれば100uの土地に対し50uまでの建物しか建てられません。これが80%なら80uまで建てられることになります。

 

逆に言えば、前者の場合は50uを空地にしなければいけませんし、後者の場合は20uだけが空地となります。下の図のように考えていただけるとイメージがつかみやすいでしょう。

この建ぺい率を決める基となっているのが、都市計画法に定められた「用途地域」です。

 

「用途地域」とは「秩序立った都市作りのために、土地にそれぞれの役割を与える」という考え方を基本にして設定されています。商業施設が立ち並ぶエリアを指す「商業地域」という単語などは耳にされた方も多いでしょう。


「用途地域」がそのエリアの方向性を決める!

商業地域の他にも用途地域にはいくつか種類あり、それぞれ異なった性質を持っています。

 

その中でも特に住環境を大事にしようというコンセプトが明確に見えるのが「低層住居専用地域」で、読んで字のごとく“低層な住居のみ建築が許された地域”となります。いわゆる「閑静な住宅街」をイメージするといいかもしれません。

 

そうした住宅街で建物同士が隙間なくビッシリと建っていたらどうなるでしょう。お世辞にも住環境が良いとは言えず、閑静な住宅街からは程遠い街並みになってしまうのは間違いありません。

 

住みやすい住宅街を形成するためには、所有者がそれぞれ自分の土地に空地を設けることでお互いの住環境を良くする必要があります。そのため「低層住居専用地域」では一般的に建ぺい率が低く抑えられているのです。住民がお互いに協力しあって住環境を確保すると言ってもいいかもしれません。

 

反対に「商業地域」は“土地を目一杯活用しようというコンセプトが定められた地域”です。

 

この場合は建ぺい率を高めに設定しないと空間を有効活用できず、その目的を達成することができません。 結果として、「商業地域」には隙間なくビルがひしめくような街並みが形成されることとなります。

 

なお、一つの土地が複数の用途地域にまたがる場合は、それぞれの面積に応じて加重平均で建ぺい率を決めるのが一般的です。

 

また、二面が道路に面している、いわゆる「角地」は建ぺい率が緩和されることも覚えておいたほうが良いでしょう。商業地域の角地であれば、建ぺい率100%、つまり土地に対して目一杯建物が建てられる場所も存在します。


「建ぺい率×容積率」で建物の形が見えてくる

一方の容積率ですが、これは「土地面積の何パーセントまで延べ床面積(=建物の総床面積)が認められるかを決めるルール」です。

 

例えば、容積率が100%なら100uの土地に対し総床面積100uの建物が建てられますし、400%なら4倍の400uまでの建物の建築が可能という仕組みです。

 

この数字も建ぺい率と同様に用途地域が基準となっており、当然のことながら住環境を重視する「低層住居専用地域」では容積率が低く、反対に土地の有効活用を目的とする「商業地域」では高く設定されています

 

簡単に言えば、住宅街では背の低い住居が多くなりますし、繁華街では高いビルを建てることができるわけです。

 

そして、この「容積率」と先ほどの「建ぺい率」を組み合わせれば、自ずとその土地に建てられる建物の形が見えてきます

 

容積率が100%でも建ぺい率が50%であれば、土地に対して半分の面積にしか建物は建てられません。そうなると50%ずつの2階建てにして、容積率100%を使い切ることになります。

 

 

容積率が400%で建ぺい率が80%の土地ならどうなるでしょう。一つのフロアは80%ですから、5階建てにすることで80%×5=400%の総床面積を稼ぎ出すことができます。

 

このように、建ぺい率と容積率が分かれば、その土地に建築可能な建物のだいたいの形が見えてきます。

 

ただし、「容積率」はその土地が接している道路の影響を受けます。避難経路の問題で、前面道路があまりに狭いような場合には用途地域として許された容積率に制限がかかることがあるのです。

 

また、「容積率」とは別に、それぞれの土地には接している道路や隣地に応じて建物の高さを制限されることが一般的です。そのため実際に図面を引いてみると、建物として容積率を消化しきれない設計となることも珍しくありません。

 

見方を変えれば、その土地の容積率をどれだけ有効に使える図面を引けるかは、その設計士の腕の見せ所とも言えそうです。


その土地の“ポテンシャル”を知ろう!

結局のところ、その土地がどの用途地域に指定されているかで「建ぺい率」も「容積率」も大きく異なってきます。

 

たとえ同じエリアで駅からの距離も同じぐらいの土地だったとしても、用途地域が違えば建てられる建物の形は変わってきてしまうのです。

 

極端な話をすれば、道路一本挟んだ隣の土地に建っているような建造物が、そのまま自分の土地にも建つとは限りません

 

この「建ぺい率」と「容積率」はインターネットで各自治体の都市計画図を見ることで、簡単に確認することができます。

 

もしあなたがこれから建築を考えているのであれば、まずはその土地の「建ぺい率」と「容積率」を確認してみることから始めると良いでしょう。そうすることによって建築できる建物のイメージがつかめますし、逆に言えば、自分が頭で描いている建物が建築できない可能性もあるからです。

 

さらに言えば、既に建物が建っている場合でも、用途地域やその他の条例が変更されていると既存と同じサイズの建物が再建築出来ないこともあります。

 

「建ぺい率」と「容積率」はその土地が持つ“目に見えない能力”、いわば“ポテンシャル”です。

 

その土地の有効活用を考えている時はもちろん、新しく不動産を購入する時も、その物件の「建ぺい率」と「容積率」を確認して、土地が持つ“ポテンシャル”をよく検討することが大切です。


(2016/10/26 文責:佐野純一)

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