数ある不動産投資の形の中でも「入門編」と言えるのが、ワンルームマンションの購入です。
この方法については「デベロッパーからしつこく勧誘の電話がかかってくる」と言ったネガティブなイメージをお持ちの方が多いのも事実。
しかし、その一方で「不動産投資の入り口」としてご相談にいらっしゃる方が多いのもこのケースです。
ワンルームマンション投資のメリットとデメリットはどんなものでしょうか。早速見てみましょう。
どんな形にせよ、不動産を購入するにはまとまった資金が必要ですが、その中では購入に必要な金額が比較的少なくて済むのがワンルームマンションです。
都内の新築であっても2000万円台前半から購入が可能ですし、中古市場に目を向ければ23区内の駅に近い物件でも1000万円程度のものもあります。
購入するにあたってローンを組むかどうかを別にしても、収益用不動産の中で手が出しやすい価格帯であることはワンルームマンションの大きなメリットです。
ワンルームマンションの手の出しやすさを後押しするのが、ローンの借りやすさです。
ほとんどのワンルームマンションは金融機関が担保価値を高く評価するRC造(鉄筋コンクリート造)ですからアパートローンが借りやすく、なおかつ築浅物件であれば融資期間を長く組める傾向にあります。
金融機関から有利な融資条件を引出すことで、それだけ不動産投資の成功率が高まるのは言うまでもありません。
現金化しづらい、つまり「流動性が低い」のが不動産投資の欠点の一つですが、その中でもワンルームマンションはその価格の安さから、ある程度の流動性が期待できます。
購入できる人が多いということはそのままマーケットの広さにつながりますので、その意味でも他の不動産投資の形に比べれば、ワンルームマンションは比較的流動性が高い商品と言えるでしょう。
流動性の高さは出口戦略の多様性に大きな影響を与える要素と考えられます。
所有する収益用の部屋が一つだけというやり方は、どうしても「空室リスク」が高くなります。一度空室になってしまえば、家賃はまったく入ってこなくなるからです。
また、手を出しやすい不動産投資の形だけに、競合商品が多い点にも注意が必要です。同じエリアに同じようなマンションが次々に建ちますから、自分の物件の競争力を保つのは簡単ではありません。
なお、安易に「空室リスク」を回避しようとしてサブリース契約を結ぶケースも多く見られますが、サブリースはあくまでも業者が儲ける手段であることを認識する必要があります。
一棟の建物を所有する場合と違い、ワンルームマンション投資には必ず「管理修繕費」という強制的な費用が発生します。この経費が利回りを大きく下げてしまうことは珍しくありません。
さらに気をつけなくてはいけないのが、将来的に修繕費が値上がりする可能性があることです。
特に新築ワンルームマンションの場合は、購入時の利回りを高く見せるために始めから無理のある修繕費が設定されていることがあります。そうした物件では5年後、10年後に修繕費が何倍にも跳ね上がるケースがほとんどです。
たとえ毎月のキャッシュフローがマイナスでも「将来は資産になりますよ」というのがデベロッパーの常套句ですが、全ての不動産は無条件に資産価値を保てるわけではありません。
「マンションは管理を買え!」と言われるように、マンションの寿命は管理状態によって大きく変わってきます。全ての部屋を賃貸に出している、言い換えれば「所有者が一人も住んでいないマンション」で質の良い管理を行うのが難しいのは誰の目にも明らかでしょう。
せっかくがんばってローンを払っても、ローンを返し終わる頃にはマンションはボロボロだった…という結末も十分にあり得るのです。
不動産投資としては投資額が比較的少額というのが、ワンルームマンション投資の大きな特長。その意味では、「自己資金の少ない人向きの不動産投資」と言えるかもしれません。
ただし、始める人が多い一方で失敗する人も多いのも、ワンルームマンション投資です。
逆説的に考えれば、「始めやすい」ということはそれだけ「競合相手が多い」ということでもありますので、その中で勝ち残っていく覚悟がないと成功するのは難しいでしょう。
不動産投資とは、安定性には優れているものの、それほど爆発的な利回りを期待できる手法ではありません。いくら自己資金が少ないからと言って、安易にフルローンでワンルームマンションを購入して放置しておくだけでは、人生に大きな変化をもたらしてくれるはずはないのです。
ワンルームマンションは不動産投資「入門編」としては有効なアプローチ方法ですが、「入門編」はあくまでも「入門編」。ワンルームマンションを一室購入したところで、不動産投資が完結するというわけにはいかないのは、私の大家としての経験を通じてハッキリと断言できます。
不動産投資の第一歩をワンルームマンションで始めるという選択肢はありますが、その場合でも「自分が目指している“不動産投資のゴール”がどこなのか」を予めよく考えておく必要があります。