「ネガティブ思考」から脱出する方法とは?

「ネガティブ思考」。自分のことをそう思っている人も少なくないかもしれません。

 

ファイナンシャルプランナー(FP)として様々な“お金の相談”を受けていると、時折「過度にポジティブな人」と、逆に「過度にネガティブな人」に出会うことがあります。

 

前者に関しては自分に都合の良い情報だけを取り込んでいる、いわゆる「確証バイアス」がかかってしまっているケースが多く見受けられます。

 

不動産業者の宣伝文句を真に受けて、きちんとした準備もできていないのに収益物件を買おうとする人などは、その典型的な例でしょう。年に何組かは「収益物件を買いたい夫」と「それを止めたい妻」という組合せのご夫婦が弊社を訪れます。

 

一方、何に対しても消極的になってしまう人は、物事を考えすぎて身動きが取れなくなっているのかもしれません。言ってみれば、“思考の迷路”に嵌ってしまっている状態です。

 

今回のコラムでは「“お金の相談”の専門家」であるFPが、数多くの相談業務を請け負ってきた経験からネガティブ思考に陥りやすい人の共通点とその対処法を解説します。


ネガティブ思考=よく考える人

始めに誤解のないようにお断りしておきますが、私はなにもネガティブ思考そのものを否定しているわけではありません。ネガティブ思考とは、言ってみれば深く物事を考えている証。物事をよく考えるという習慣がない人では、そもそもネガティブ思考になれないからです。

 

ただ、物事を突き詰めて考えていく中で、どうしてもその方法が持つデメリットに目がいってしまうことがあります。様々な解決策を検討するものの、どの方向を向いてもそのデメリットが気になってしまい、結局どこへも一歩を踏み出せず「どうせ試しても無駄だろう」と身動きが取れなくなってしまうのが、ネガティブ思考の基本的な構造なのだと思います。

 

しかし、私が面談時に常に口にする言葉ですが、全ての方法にはメリットとデメリットがあります

 

メリットしかない方法というのは存在しませんし、その逆もまた然り。仮にメリットしかない方法があればそれが唯一の解決となって他の方法は存在しないことになりますし、反対にデメリットしかないという方法があれば早々に世の中から淘汰されていくでしょう。


万人にとっての最適解は存在しない

住宅を考える時によく議論の対象となる「賃貸vs購入」などはその典型例です。もし購入にメリットしかないのであれば賃貸という形は残らないわけで、どちらにもメリットとデメリットが存在するからこそ、議論を巻き起こしながらも両者は共存していくのです。

 

本当の意味で重要なのは、その方法が持つメリットとデメリットがその人にとってもメリットとデメリットになるかということです。あるいは、その人にとってはその方法のメリットとデメリットのどちらが大きいかと言い換えることもできるでしょう。

 

先程の「賃貸vs購入」の場合、例えばその地に数年しか住まないのであれば、その人にとっては家を購入するよりも賃貸のメリットの方が大きいと言えます。「家賃は無駄金」と主張する人もいますが、このケースでは購入時に支払う仲介手数料やローン手数料の方がよほど無駄金になる可能性が高くなるからです。

 

このようにどんな方法であれ、万人にとって共通の最適解というのはありません。大事なのはその方法が自分に合った解決策なのかということなのです。


メリット同士を比較してみよう

ですから、もしあなたがネガティブ思考に陥ってしまいそうになったら、検討している解決策のデメリットだけではなく、ぜひメリットにも目を向けてみてください

 

繰り返しになりますが、デメリットだけという方法は世の中から自然淘汰されていきますから、目の前にある方法にも必ずなにかしらのメリットが存在するはず。

 

いくつかの選択肢があれば、そのメリット同士を比較して自分にとって一番メリットの大きいものを探してみましょう。狭い視野でマイナス面だけを考えるのではなく、プラス面も含めた包括的な判断ができれば、自分に適した解決策が自ずと絞られてくるはずです。

 

例え似たようなケースであっても、その人の置かれた環境や考え方、そして経済的な状況(リスク許容度)によっても最適解は変わってきます。他者との比較に意味はありませんし、他の人のやり方を参考することはできてもそのまま真似することは得策ではありません


コンサルティングとは「判断材料を提供すること」

私がFPとして行う“お金の相談”においてもその点を重要視しています。

 

私が解決策を教えるのではなく、相談に来た人が自分自身で解決策を導き出すための判断材料を提示すること。それが私の心がけるコンサルティングです。相談に来た人にとっての正解が私の正解と一致するとは限らないからです。

 

始めにも触れましたが、ネガティブ思考に陥りやすい人は物事をよく考えるという特性を持った人です。

 

その特性を活かしてデメリットと同様にその方法が持つメリットも扱うことができれば、きっと自分にとっての最適解を見つけられるでしょう。少し視点を変えるだけで、今まで見えなかった新しい景色が目の前に現れるはずです。


(2025/04/16 文責:佐野純一)

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