ちょっとしたコツで「お金の相談」はもっと良くなる!

「お金の相談」と聞いて、あなたはどんなことを思い浮かべるでしょうか?

 

少し前までは「保険屋さん」というイメージしかなかった(あるいは「聞いたこともない」という反応だった-苦笑)「ファイナンシャルプランナー(FP)」も、近年では少しずつですが「お金の相談をする人」という認識が広がってきたように思えます。

 

特に若い世代の間では「金融商品を売るためのセールストーク」と「お金を払って相談すること(コンサルティング)」の違いを理解している方も多く、日本ではまだ馴染みの少ない「有料相談」という形態もいずれは一般的になるのかもしれません。

 

誰しもお金には関心があるもの。「お金の相談」と聞いて興味をそそられない人の方が少ないでしょう。ただその反面、「実際に相談しようとすると、何を聞いたらよいのか分からない」という声もよく耳にします。

 

FPの私としては「お金の相談」が特別なものでなくなる日が来るのを願っていますし、尋ねられれば「ご相談にいらっしゃるのに特に予備知識は必要ありません」とご案内していますが、一方で、実際に数多くのご相談を受けている中では「こうしたらもっと有意義なのに…」と感じることもあります。

 

そこで今回のコラムでは、「“お金の相談”の専門家」として相談を受ける立場から、ちょっとした“面談時のコツ”のようなものをお伝えしたいと思います。

 

このコツさえ掴めれば、あなたの「お金の相談」はもっと良質なものになるはずです。


コツ@…なんでもかんでも聞くのはやめよう!


一つ目のコツは「質問の内容を絞る」ということです。

 

一口に「お金の相談」と言っても、その内容は多岐に渡ります。お金とは生活の全てに密着しているものと言っても過言ではありませんから、普段の生活の中でもお金に関する疑問はたくさん溜まっているはずです。

 

そのせいか、一度のご相談でお金のことをなんでもかんでも聞きたがる人がいます。これまでそうした質問をする機会がなかったわけですからその気持ちは良く分かりますが、これはあまりオススメできません。

 

こうしたケースでよく見受けられるのが、相談の途中でも思いつくまま「お金の質問」をしてしまい、話があっちこっちにに散らばってしまうという状況です。

 

もちろん私も聞かれたことに対してその都度丁寧にお答えするようにしていますが、後で私自身が反省する場合も少なくありません。結果として話が本筋から何回も脱線してしまって、全体としてかなりボヤけた内容になってしまうからです。

 

ひどい時には、脱線に時間を取られて過ぎてしまい、元々の本題にさける時間が少なくなってしまうこともあります。これではどう頑張ってもコンサルティングの質を上げることができません。

 

さらに悪い点は、本題の時間を犠牲にしたにも関わらず、あちこちに飛んだ断片的な知識はその人にとって吸収しにくいということです。

 

我々FPは、多岐に渡るお金の知識を大きな枠組みの中から区分わけをして捉えることができます。言ってみれば、頭の中にいくつかの大きな棚があり、その棚にある引き出しの中に細かい知識をしまっているようなイメージです。

 

その棚自体を持たない人がいきなり引き出しの中身だけを受け取っても、どこにしまえばいいかわからないでしょう。ですから、断片的に受け取った知識は、その場では理解したつもりでも、本当の意味で身につけることが難しいのです。

 

面談という限られた時間の中では、系統だててご説明する分量にも限界があります。せっかく得た知識を無駄にしないためにも、自分が「何を聞きたいか」「何を解決したいか」を明確にしておくことが肝心です。

コツA…知らないことは知らないと言おう!


二つ目のコツは「知らないことは知らないと言う」ということです。

 

確かに大人になってから「知らない」と口にするのは恥ずかしいと感じる人もいるかもしれません。「お金の相談」にいらっしゃる方は、ほとんどが社会にでてそれなりの経験を積んでいる立場ですからなおさらでしょう。

 

そのため、相談時に自分が知らない要素が出てきたとしても理解が不十分のままさらりと流してしまう傾向があります。

 

私としてもお客様の理解度を確認しながら慎重にコンサルティングを進めますが、中には自分が知らないことを隠そうとする人もいて、そうなるとお互いの話が噛み合わないまま時間だけが無為に過ぎてしまいます。

 

ここでハッキリ申し上げておきますが、現在の日本社会において「お金の知識が不足している」ということは、決して恥ずかしいことではありません。「お金のことを口にするのはいやらしい」という古い風土の中、誰もお金のことを教えてもらう機会を得ることがないまま成長してきているからです。

 

私自身、今でこそ「お金の相談」を生業にしていますが、30才を過ぎて賃貸経営を始める前、一般の会社員だった頃には税金のことなど全く知りませんでした。また、自分で会社経営をしていなければ、社会保障のこともずっと理解しないままだったでしょう。

 

今の日本社会に於いて、学校教育を経て会社に勤めるという「一般的なコース」では、そもそもお金の知識に触れる機会が巡ってこないのです。

 

税金や社会保障を理解するのはもちろん、資産運用をするのであれ、あるいは生命保険に加入するのであれ、お金に関する“無知”をごまかしたままでは良い結果を望むべくもありません

 

まずは自分が持っているお金の知識を客観的に把握すること

 

それが経済的な問題を解決する第一歩と言えるでしょう。

コツB…物事を考える順番を大切にしよう!


三つ目のコツは「物事を考える順番を大事にする」ということです。

 

あなたの周りにいる「仕事がデキる人」を思い浮かべてみてください。

 

きっとその人は、最初から瑣末な問題に目を向けるのではなく、まず大きな流れを組み立てて全体像を構築してから、細かい問題に取り組んでいくはずです。

 

そうすることによって効率的に物事を進め、限りある時間や労力、予算の中で最大限の効果をあげることができるのです。

 

人生における「お金の考え方」もその例外ではありません

 

例えば、「どんな保険に入ったらいいか?」と悩んでいる人がいるとします。

 

この場合、いきなり各保険商品の比較をしても意味がありません。

 

そもそも保険とは将来必要になるかもしれない保障に備えるものであり、「どの商品が良いか」の前に「どんな保障が必要か」をハッキリさせないと答えを導き出すことなど不可能だからです。

 

資産運用についても同じことが言えます。

 

投資に関しては残念ながら方法論から入ってしまう人が圧倒的に多いのですが、目標も定めず始める資産運用は知らず知らずのうちに無用な危険を犯してしまう可能性が高く、結果としてリスクの大きい“投機”となってしまいがちです。

 

古来から投資とは「余剰資金で行うもの」という鉄則があり、こちらも「どの運用方法が良いか」の前に、その人の「余剰資金はいくらか」を考える必要があります

 

裏を返せばこれは「これから必要となる生活資金はいくらか」を導き出すことを意味しています。

 

私のコンサルティングでライフプランの作成をオススメすることが多いのは、人生における大きなお金の流れを先に掴むことで、こうした問題に明確な判断基準を持つことができるからです。

 

全体像を構築する前に細部だけを考えたのでは、どうしても正確な判断を下すのが難しくなってしまいます。物事を考える順番を大事にすることで、一見複雑な問題にもシンプルな解決方法が見つかることも少なくありません。

「お金の知識」を自分のものにするために…

誤解のないように改めて申し上げれば、FPに「お金の相談」をするのに特別な準備をする必要はありません。

 

ただ、自分が本当に「知りたいこと」や「不安に思っていること」の優先順位はつけておいたほうが、相談時に得ることができた知識をしっかりと自分のものにできると思います。

 

私はよくご相談のお申し込みがあった際に「ご自身の身の回りのお金を整理してきてください」とお願いします。

 

自分自身にとっての「入ってくるお金・出ていくお金・貯まっているお金」を再認識することで、自分が今「何を知りたいのか」「何を不安に思っているのか」が見えてくることが多いからです。

 

「お金の相談」はまだまだ皆さんに馴染みが薄く、もしかしたらハードルの高いものに思えるかもしれませんが、今回ご紹介した“3つのコツ”を心掛けていただければ、あなたの相談はずっと質の高いものになるはずです。


(2021/07/21 文責:佐野純一)

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