「72の法則」でウマい話から身を守れ!

「資産運用では“利回り”が大事!」

 

投資の世界においてあまり経験のない人であっても、そう言われたら納得してしまうに違いありません。これは誰にとっても非常にわかりやすい、ある種の“真理”です。

 

ただ、その一方で「あまり高いリターンを謳う金融商品だと逆に怪しいなぁ…」と感じる人も多いはず。

 

そうした資産運用初心者が抱えるモヤモヤ感は、実は自分の中で“利回り”に対して具体的なイメージを持てていないことが大きな原因の一つです。

 

例えば、「年利3%の金融商品を20年間運用し続けたら資産はどのくらい増えるのか?」 この問いに即答できる投資初心者の方はそれほど多くないでしょう。

 

資産運用は大事なことですが、それでも「ゴールが見えていない投資」ほど危険なものはありません

 

そこで今回のコラムでは、「“お金の相談”の専門家」ファイナンシャルプランナー(FP)が利回りについてのイメージを持つのに役立つ「72の法則」について解説します。

 

この簡単な計算式を覚えておけば、資産運用の目標設定の助けになるだけでなく、あなたが「うまい儲け話」に引っかかるのも防いでくれるはずです。


「72の法則」で“資産が倍になる時間”を知る

「72の法則」とは、簡単に言えば「元手が倍の金額になるのに必要な時間」を導き出すための計算式です。

 

「72」という数字を利回りの%で割ってあげれば、その利回りの複利運用(利息を運用に回す方法)で手元のお金が倍になる年数がわかるという仕組みです。

 

言葉で説明するよりも、実際に計算してみたほうが理解しやすいでしょう。「手元の100万円を200万円に増やすためには何年かかるか」を72の法則で計算してみます。

 

仮に金利が1%だった場合、100万円を複利運用して200万円にするには「72÷1」で72年もの歳月がかかります。

 

同じ計算式に従えば、以下のような答えが導き出されます。

  • 金利が3%の場合は「72÷3=24年」
  • 金利が7.2%の場合は「72÷7.2=10年」
  • 金利が10%の場合は「72÷10=7.2年」

金利が高いほど元手が倍になるまでの時間は短くなっていくということは誰にとっても想像に難くないと思いますが、この「72の法則」を用いることで具体的な年数が簡単に計算できるのです。

 

単に金利の数字だけを並べても、イメージがわきづらいかもしれません。今度は実際の金融商品にこの数字を当てはめて考えてみましょう。


その投資信託はいくらに増えるのか?

例えば、資産運用の入門編としておなじみの「投資信託」。

 

投資信託は、市場の動きに追従する“インデックス型”と、より大きなリターンを狙う“アクティブ型”の2タイプに大別されます。

 

最近のデータを見ると、インデックス型では年利3%程度で運用されている商品が一般的です。こうした商品を100万円分購入して、このままの利回りがずっと続くとしたら(←ココが重要です!)、24年後に倍の200万円になるということを「72の法則」は教えてくれています。

 

一方のアクティブ型の利回りは商品により千差万別です。中には年利20%を超えるものもあり、こうした商品を購入すればわずか3年半程で元手が倍になる計算になります。

 

「じゃあ早速そんなアクティブ型投資信託を買って…」と思った人は、慎重に資産運用をしたほうが良いタイプかもしれません。3年以上ずっと年利20%をキープできるような投資信託は極めて稀だからです。

 

爆発的な伸びを誇るアクティブ型の投資信託は、反対に崩れる時は一気に崩れることも多く、ある年に年利30%を記録した商品が、次の年にはマイナス30%になるケースも決して珍しくありません。

 

「72の法則」はあくまでもその金利がずっと続くことを前提とした計算式です。投資信託等の金融商品が「この先ずっと同じ利回りが続くのか」という点とは、全くの別問題ですので注意が必要です。


銀行預金で元手を倍にするには…

同じ金利がずっと続くと言えば、銀行の預金でしょう。銀行の預金に「72の法則」を当てはめたらどうなるでしょうか。

 

歴史的な低金利が続く現代の日本では、銀行預金の金利も低い基準で推移しています。普通預金より金利が高い定期預金でも、2018年現在、日本中の金融機関を探しても0.25% 程度が最高でしょう。

 

このことはつまり、定期預金で元手を倍にするには「72÷0.25=288年」かかることを意味しています。定期預金に預けている限り、人生を3回程度繰り返さないと元手が倍になることはないというわけです。

 

普通預金の場合、もっと悲惨な状況であるのは言うまでもありません。

 

現在の都市銀行の普通預金は軒並み0.001%に抑えられています。ということは、普通預金で元手を倍にしたいのならば、そのために必要な時間は実に「72÷0.001=7万2千年」。現代人(ホモ・サピエンス)が誕生したと言われるころまで遡って貯金したとして、ようやく今元手が倍になっている計算となるのです。

 

いかがでしょうか。「72の法則」を通して、なんとなく金利(利回り)のイメージがつかめてきたと思います。


「72の法則」で広告のウソを見破れ!

私が「“お金の相談”の専門家」FPとして、皆さんに「72の法則」をお話しするにはある狙いがあります。

 

それは、「72の法則」を通して金利に対する具体的なイメージを持つことで、世の中にゴロゴロ転がっているうまい儲け話に「怪しいな」と思える感覚を養ってもらいたいからです。

 

私の専門である不動産投資の世界において、次のような広告は日常茶飯事です。

 

「100万円で始めたアパート経営が3年後に資産1億円に!」

 

主に収益物件を売る不動産業者に多く見られる広告です。あなたもこれに近い内容の宣伝を目にしたことがあるでしょう。

 

さあ、「72の法則」を知った今、あなたの目にこうした広告はどのように映るでしょうか。

 

この広告を素直に言い換えると、「3年間で資産が100倍になった」ということになります。「72の法則」によれば、3年間で元手を倍にするだけでも「72÷3=24%」で運用しなければなりません。仮に年利72%で運用できれば1年で倍になりますが、それを3年間続けたとしても「2倍→4倍→8倍」と3年間で10倍にすら届かないのです。

 

実は、このような広告は「資産」という言葉の定義を悪用した一種のトリックです。

 

ただ、そうした専門的な知識がなかったとしても、「72の法則」で利回りのイメージを持っておけば、聞いただけですぐに「怪しな…」と思えるはず。どう考えたって、普通預金の金利が0.001%の時代にそんな投資があるわけがないのです。


騙される人が後を絶たないワケ

「世の中にうまい話はない」

 

誰もがそうわかっているはずなのに、投資にまつわる詐欺で騙される人が全国で後を絶ちません。「自分だけは大丈夫だと思っていた」という人の話は毎日のようにテレビなどでも目にします。

 

日頃から自分の中の“お金のセンス”を磨いておけば、こうした甘い罠に引っかかる可能性はグンと低くなります。どこまでが現実的な投資方法の話で、どこから先が実際にはあり得ない「うまい話」なのかの線引きができるからです。

 

「72の法則」はそうした“お金のセンス”を磨くためにぜひ覚えておいてほしい知識です。ここを出発点として様々な知識を吸収していくことで、あなたの“お金のセンス”はどんどん研ぎ澄まされていくでしょう。

 

もちろん、“お金のセンス”は投資の時だけに役立つものではありません。日々の生活はもちろん、仕事や他人とのコミュニケーションなどのあらゆる場面であなたの助けになってくれるはずです。

 

「自分のお金に対して真剣に向き合うこと」

 

それが現代社会に生きる我々にとって、自らが望む人生を送るために非常に大切な姿勢ではないかと思います。「お金の話は苦手…」という人も、まずは身近なところからお金に興味を持ってみることをオススメします。


(2018/07/25 文責:佐野純一)

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