
「そうした客観的な意見が聞きたかった!」
ファイナンシャルプランナー(FP)として「住宅購入」のご相談を受けた時、こんなお声を頂戴することがあります。
住宅購入は人生の一大イベント。「人生で一番高い買い物」と言われる住宅のことを誰かに相談したいという気持ちを持つ人は多いでしょう。
ただ、そのための“適切な相談相手”を探すのは意外と難しいのかもしれません。私もご相談を受けた方から「始めからここに相談に来れば良かった〜!」と言われることがあります。
こうしたお客様は私のところに来るまでに「何を求め」「誰のところ」に相談に行き、結果として「何を得た」のでしょうか? そして、私のところでどうしてそんなセリフが飛び出したのでしょうか?
今回のコラムでは、モノを売らないコンサルタントの立場から「“お金の相談”の専門家」であるFPが「“客観的な”住宅購入のアドバイス」を考えてみたいと思います。
一口に「住宅購入相談」と言っても、その内容は様々です。一つとして同じものがないと言っても過言ではありません。
そんな中でも、対照的なものを比較して「どちらが良いか」と悩むケースはとても多く見られます。その代表例をまとめてみましょう。

「家を買った方がいいのか、それとも賃貸のままの方がいいのか」というご相談です。
「家賃以下のローン支払いでアナタも家が買える!」といった不動産業者のチラシに誘われて実際に物件を見に行ったけど、本当に家を買ったほうがいいのか悩んでいる。そんな人が私のところにご相談に来ます。
試しに訪れた不動産業者には「家賃はもったいない」と断言され、家の購入がいかに素晴らしいかを散々説明されましたが、冷静に考えると彼らは不動産を売るのが商売。当然「賃貸の方がいい」なんて口が裂けても言いません。
そんな彼らの言うことをそのまま鵜呑みにして、そのまま家を購入しても良いものでしょうか?

家を購入することは決めたものの、「一戸建てがいいのか、それともマンションの方がいいのか」と迷っているケースです。
一戸建ての展示場に行けば、「マンションは階下への音が気になる」とか「管理修繕費などの維持費が高い」など、戸建ての優位性を強調されます。
一方、マンションギャラリーに出かけていけば、「一戸建てはセキュリティが不安」とか「木造は建物の耐久性が低い」などと戸建のデメリットを聞かされることになるでしょう。
どちらもあながち間違いではありませんので、聞いている側としては混乱してしまうのも無理のないことかもしれません。

やっとのことでマンションに決めたと思ったら、今度は「新築がいいのか、中古がいいのか」という問題が持ち上がります。
新築マンションのデベロッパーに聞いてみれば、「せっかく買うのなら新築でしょう」とか「新築なら設備も最新式です」と強烈に新築をプッシュします。
一方、中古マンションの売買で仲介手数料を稼ぐ不動産業者の口からは「新築はデベロッパーの利益が乗っかっているから割高ですよ」とか「きちんと管理されているマンションならば中古でも一生住めますよ」などと勧められたりします。
これまたどちらの言い分にも一理あり、どちらが正しいとも言い切れないところです。

最終的に購入する物件が決まったら、最後は「住宅ローン」の組み方を考えなければなりません。
物件を売りたい不動産業者は、見た目の負担額が少なく見える「変動金利」をこぞって勧めますし(前出の「家賃より安い住宅ローン」が典型的な例です)、変動金利であればもし金利が上がったとしても自分が取りっぱぐれる心配のない金融機関もそれに便乗します。
とは言え、雑誌等をめくれば固定金利をプッシュする記事も少なくありません。マイナス金利政策にピリオドを打ち、金利上昇が見込まれる現在の日本では今こそ固定金利を選ぶべきという考え方も十分に理解できます。
「“お金の相談”の専門家」であるFPとしては住宅ローンの組み方の前にそもそも「自分に合った住宅予算が精査できているのか」が気になるところですが、物件探しに疲弊してしまってローンのことまで頭が回らない人たちが不動産業者に勧められるまま提携ローンを組んでしまうケースが多いのが現状です。

最後の選択肢は「今家を買った方がいいのか、それともお金を貯めてから買った方がいいのか」というものです。
これに関しては、どこの業者に言っても「今買った方がいい!」と言われることでしょう。新築のマンションや戸建ての販売業者にしても、中古物件を仲介する不動産業者にしても、今あなたに動いてもらわないと自分の商売にならないからです。
特に会社組織では数年後の見込み客を悠長に待っていられるようなところは少なく、なんらかの理由をつけては今すぐ行動を起こさせようとするはずです。
その収益構造を考えれば業者にとっては当然の行為かもしれませんが、それは果たしてあなたのためになることでしょうか?

冒頭でも触れたように、私のところにご相談にいらした方にその理由を聞いてみると、「第三者目線で見た客観的な意見が聞きたかった」という意見が多く聞かれます。
「自分にとって何が一番いいのか」を客観的に判断してほしいという気持ちは誰もが持っていると思いますが、上記の例のように、残念ながらどの業者のところに行ってもその願いを叶えるのが難しいでしょう。
冷静に考えてみれば当たり前の話かもしれません。相談に行ったところで彼らは「自分の会社の商品が一番」と言うに決まっているのですから。
これは何も彼らを非難するものではなく、「商品を販売する」という仕事している人の宿命と言える行動原理です。誰だってタダ働きはしたくありません。モノを売っている人に「商品を売るな!」と言うほうが、むしろ理不尽というものでしょう。
そう考えると、彼らのところに話を聞きに行くことを「相談」と位置づけること自体に大きな違和感を覚えてしまいます。始めから商品販売という答えありきでは決して「相談」にならず、ただの「売り込み」になってしまう可能性が高いからです。

「全ての方法や商品にはメリットとデメリットがある」
面談の時に私がよく口にする言葉です。肝心なのは、その方法や商品のメリットが必ずしも「あなたにとってのメリット」とは限らないし、反対にそのデメリットが確実に「あなたにとってもデメリット」になるわけでもないということ。
実はこの点にこそ、FPが相談に来た人に対して果たすべき大きな役目があると私は考えています。
相談業務を主とするFPは、どの業者の味方でもありません(その業者の社員でFP資格を持っている人やその業者に雇われたFPは別ですよ、念のため-笑)。
FPの仕事は「相談者の利益を最優先に考えること」、言い換えれば「“アナタの味方”であること」です。そして“アナタの味方”であることで、FPは初めて客観的な第三者目線でご相談が受けることが可能となるのです。
さらに言えば、FPがあなたにとって一番いい方法を決めるわけでもありません。
あなたの正解はあくまであなたが決めるもの。FPの仕事は「あなたが正解を決めることができるだけの判断材料を提供すること」です。ある意味では、それこそが「相談業務の本質」だと私は考えています。
業者のところへ行って商品の特性を聞くことももちろん大事です。ただ、あなたが「客観的な意見」や「第三者的な視点」を求めるのであれば、その相談相手としてFPという選択肢もぜひ考慮してみてください。
もしかしたら「始めからここに相談に来れば良かった〜!」と言った相談者の気持ちが、あなたにも分かるかもしれません。