あなたの生命保険は「無駄」かもしれない…

「生命保険なんて無駄!」

 

ファイナンシャルプランナー(FP)としてお金に関するご相談を受ける時、こんな風におっしゃる方もいます。

 

さらに、「あんな大々的に宣伝するなんて、保険会社はよっぽど儲けているに違いない!」と嫌悪感を露わにする人も少なくありません。

 

私も「“お金の相談”の専門家」として、そうしたお考えに反対意見を唱えるつもりはありませんが(笑)、そうは言っても生命保険には生命保険の担うべき役割があるはず。

 

そこで今回のコラムでは、保険商品を売らないFPが、コンサルタントとしての立場から生命保険の“本当の役割”を考えてみたいと思います。

 

保険の本当の役割がわかれば、きっとあなたも「無駄な保険」に入らずに済むはずです。


生命保険が無駄に思えるワケとは?

そもそも、なぜ多くの人が「生命保険は無駄」と感じているのでしょう。

 

それは、現実問題として実際にはほとんどの保険が無駄に終わっているからに他なりません。

 

本来、生命保険とは「万が一」のための保障を用意するもの。

 

ただ、「万が一」はあくまで「万が一」ですから、そうした事態が起こらないことの方が圧倒的に多く、「死亡保障の保険料が無駄になった」とか、「医療保険を入っていたけど、一回も入院しなかった」という声も多く聞かれます。

 

保険料が無駄になったということは、見方を変えれば「万が一」という憂慮すべき事態が起こらなかったということですから、むしろ喜ぶべきなのかもしれません。

 

ただ、一方で高い保険料を払い続けたにもかかわらず、その恩恵を被れなかったことについては、やはり「もったいなかった」という思いが生まれるのは人情というものでしょう。


「万が一」にもいろいろある

生命保険加入の大きな動機となる「万が一」という理由。一口に「万が一」と言っても、その言葉の捉え方には大きな個人差があるように感じます。

 

人によっては「もしかして起こるかも?」と思うことを万が一と言うかもしれません。逆に「絶対に起こらないだろう」と考えていることを万が一と表現する人もいます。

 

極論すれば、後者の場合は万が一のために保険に加入する必要もなさそうですが、結局のところ「万が一」が本当に起こるかどうかは誰にもわかりません。身も蓋もない言い方ですが、あくまで結果論でしか判断ができないものです。

 

それでは保険について考えるだけ時間の無駄なのか? そう結論づけるのは早計です。

 

こんな時、「“お金の相談”の専門家」であるFPならどのように考えるでしょうか


生命保険とは「ライフプランを守るもの」!

私は生命保険のご相談を受けた時も、始めにライフプランを作ることをお勧めしています

 

なぜなら、生命保険の本当の役割は「ライフプランを守ること」だと考えているからです。言い換えればこれは、「ライフプランを考えずに設計した生命保険には意味がない」ということでもあります。

 

実際にライフプランを作ってみると、何一つ問題が見つからないケースはむしろ稀です。大多数の場合は、なにかしらの問題や解決すべき点が見つかり、今後の収入や支出を調整しながら、そのご家庭の「理想のライフプラン」を探っていきます。

 

改善へのアプローチに決まった正解はありませんから、ご本人たちの意向が重要になってきます。ですからFPは、そうした作業の過程でそのご家庭の考え方や資産状況、今後のキャッシュフローのイメージを掴んでいくのです。


ライフプランで「あなたが入るべき保険」が決まる!

生命保険の本当の役割とは、こうして苦労して作り上げたライフプランが大きく崩れないようにすることです。

 

ライフプランを作ることでそのご家庭が今後見込んでいる収入がわかれば、なにもそれ以上大きな保障をかける必要はありません。例えば、奥様が専業主婦のご家庭とフルタイムで働いている家庭では、奥様の死亡保障の必要額は自ずと変わってくるでしょう。

 

あるいは、既に住宅ローンを組んでいる、またはこれから組む予定であれば、住宅ローンに付随している団体信用保険の分だけ、死亡の必要保証額から差し引くこともできるはずです。

 

極端な例ですが、もし既に十分な資産を持っているのであれば、生命保険など必要がない可能性だってあるのです。

 

それなのに、毎月の保険料が大きすぎて家計が回らなくなったり、貯蓄型保険の負担が重くて手元資金が枯渇するようでは、本末転倒です。こうした保険の入り方は、ライフプランを守るどころか、ライフプランそのものを破壊してしまうことになりかねません。

 

そんな保険は、「無駄な保険」に留まらず、もはや「害をなす保険」と言っても差し支えないでしょう。


無駄な保険に入らないようにするためには…

突き詰めて考えれば、必要な保障はご家庭によって当然違うものですし、いくら「万が一」が心配だとしても、実際に負担できる保険料もまたそのご家庭によって変わってきます。

 

「どちらの保険が得か」とか、「保険料が安くならないか」といった表面的な問題を論じる前に、まずは自分のライフプランを作成することで、「生命保険について本当に考えるべきこと」が見えてくるはずです。

 

さらに言えば、ライフプランになにか問題があったとしても、それに対する解決手段はなにも生命保険だけではありません。しかし、生命保険を売ることを仕事としている営業マンでは、保険以外の選択肢をあなたに提示することは不可能です。

 

「無駄のない保険」とは、“あなたにとっての必要最小限の保険”に他なりません。そして、自分の“必要最小限”とは、ライフプランを通して初めて具体的な数字が可視化できるものです。

 

その意味では、ライフプランを作ることこそが、あなたが無駄な保険に入らないための一番の近道なのかもしれません。


(2020/05/20 文責:佐野純一)

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