最近「REIT(リート)」ってよく耳にするけど?

「REIT(リート)」という言葉をあなたはご存じでしょうか。

 

最近ではメディア等でもよく登場するようになったこの「REIT」。雑誌でも特集が組まれたり、REITだけを取り扱った本が出版されたりとだいぶ認知度が高まってきましたし、ファイナンシャルプランナー(FP)として不動産投資や資産運用のご相談を受けている時も話題に出ることがあります。

 

それでも、REITは運用方法としてはまだまだメジャーとは言えません。「名前だけは聞いたことがあるけど、実際にどういう金融商品なのかをよく分からない」という方が多いのも事実でしょう。

 

そこで今回のコラムでは、自ら賃貸経営を行う現役の大家でもあり、「“お金の相談”の専門家」でもあるFPが、不動産投資家としての観点からREITの正体とその活用方法を解説したいと思います。


REITとは「不動産投資信託」のこと

REITとは「不動産投資信託」のことで、「Real Estate Investment Trust」の頭文字をつなげた言葉です。

 

その歴史は意外と古く、1960年代にアメリカで誕生したと言われています。1990年代にアメリカで市場が拡大されたのを受け、日本では2001年に制度の整備が行われました。

 

日本のREITのことを「J-REIT(ジェイ・リート)」と呼ぶことがありますが、これはアメリカのREITと仕組みが異なる部分があるためです。今回は混乱をさけるために敢えて両者を分けず、REITと統一して説明したいと思います。

 

さて、気をつけていただきたいのが「不動産投資信託」という言葉。これは「不動産投資(を)信託(する)」という意味で捉えると本質を見誤る恐れがあります

 

むしろその性質を考えれば、「不動産(を対象とした)投資信託」と認識したほうがより実態に近いでしょう。

 

他の投資信託と同じように、REITも「多くの投資家から資金を集めて運用し、その収益を投資家に分配する」というのが基本構造です。運用するためには「投資法人」という特別な法人を設立しなければならず、この投資法人は「不動産運用以外の業務を認められていない」など、いくつかの法的な規制があるのもREITならではの仕組みと言えます。

 

REITの場合、「運用の対象が不動産に限定されていること」、そして「収益のほとんどが賃料収入となること」が大きな特徴となっています。

 

また、運用する投資法人が一定以上の分配金を出せば法人税が実質非課税になることから、分配金に関しては東京証券取引所の平均を上回っているのは特筆すべき点でしょう。


REITが誕生したワケ

REITを理解するためには、その誕生の理由を紐解くのが一番です。そもそもREITはなぜ誕生したのでしょうか?

 

そこには不動産投資が持つ二つのデメリットを解消する狙いがあったと言われています。

 

@不動産投資には「大きな運用資金」が必要


現物の不動産を対象にした運用、つまりアパート一棟やマンションの一室を購入して賃貸経営を行うには、それなりにまとまった資金が必要となります。

 

もちろん、元手がなくてもアパートローンを活用して不動産投資を始めることは可能ですが、よくある不動産会社の広告のように「頭金ゼロ」で始めてしまうと、後々苦しくなる可能性が極めて高くなります。長期間に渡って安定的な運用を続けるためには、やはり初期段階である程度の資金投入が不可欠です。

 

その点において、不動産投資は“誰にでもできる資産運用”とは言えません。現時点である程度の資産を持っている人向けの投資方法となってしまいます。

 

そこでREITでは、「複数の投資家がお金を出し合うことでこの問題を解決しよう」としました。

 

投資信託が投資家から資金を募ってスケールメリットを目指すように、REITの場合は投資家が言わば“共同オーナー”となり、間接的に賃料収入を得ることができるようにしたのです。多くの投資家からお金を集めることで、個人では難しい大規模な商業施設等にも出資が可能となりました。

 

「少額で不動産投資を行いたい」

 

そんなニーズがREITの誕生を後押ししたと言えるでしょう。

A不動産投資は「流動性」が低い


資産運用にまつわる三特性のうち、「流動性」とは“いつでも現金に換えられるかどうか”の目安を指し、「換金性」という言い方をされることもあります。

 

実は、この「流動性」は不動産投資の弱点の一つ

 

もちろん不動産も現金化することは可能ですが、それには“時間”と“コスト”がかかります。特に急いで売却しなければならない場合だと売値を下げざるをえないケースもあり、そうした面からも「不動産投資は流動性が低い」と言えます。

 

その点、REITは証券の仲間ですから、市場さえ開いていればいつでも現金化でき、売買にもそれほどコストはかかりません。この仕組みを使えば、ある程度の「流動性」を確保しながら不動産を対象とした投資が行えるのです。

 

なお、REITは「投資信託」と名付けられていますが、実際の売買は投資信託と同じではなく上場株式のルールに準じていますので、その点は注意が必要です。

不動産投資とREITは「似て非なるもの」

一方で、REITは現物の不動産投資が持っているいくつかの特徴を有していません

 

例えば、手元に現金を残すために有効になる「減価償却費」の概念もありませんし、所得の種類も不動産所得のように総合課税ではありませんので税金の考え方も違ってきます。「家賃収入」という定期的なインカムゲインがあるわけでもありません。

 

その意味では、不動産投資とREITは「似て非なるもの」と捉えるのが一番適切であるように思えます。

 

資産運用の方法論としても、両者には大きな隔たりがあります。現物の不動産投資でうまく運用できた人がREITで成功するかどうかは全くの別問題ですし、その逆もまた然りでしょう。

 

REITのリスクに目を向けてみれば、「価格変動リスク」を始めとした投資信託のそれに準じます。その点でもREITは「投資信託の一種」と考えたほうが良さそうです。

 

前述のように金融商品としての仕組みが特殊なために特別視されやすいのですが、「債券に特化した投資信託」や「一定の分野を専門に扱う投資信託」と同じように、「不動産をテーマとした投資信託」という捉え方が一番しっくりくるのかもしれません。


“良いとこ取り” のはずが“悪いとこ取り”になることも…

もともとは不動産投資のデメリットを解消するために生まれたREIT。言い方を変えれば、これは「不動産投資の“良いとこ取り”を狙った商品」とも考えられます。

 

ただ、“良いとこ取り”を狙ったはずが結果として“悪いとこ取り”になるというのも、世の中では往々にして起こることです。

 

例えば、REITは投資信託である以上、どうしても運用会社に対するコストはかかってしまいます。不動産投資は安定性はあっても爆発的な利回りは期待できませんから、運用コストで利回りを削られることに対してどう考えるかは判断が分かれるところでしょう。

 

その他にも、「家賃収入」という他人の力を借りての資産形成はできませんし、借入金がない分、自己資金に対してのレバレッジ効果も期待できません。なにより、私が“不動産投資の最も大きな特徴”として挙げる「経営的判断」とは無縁の存在です。

 

繰り返しになりますが、現物の不動産投資とREITはあくまでも「似て非なるもの」

 

その点を正しく認識した上で、“現物を使った不動産投資の代わり”と考えるのではなく、数ある運用方法の一つとしてREITが自分の投資目的に沿った商品なのかどうかをしっかり見極めることが大切です。


(2024/02/21改訂 文責:佐野純一)

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